邦題ペトルーシュカ
作曲1910年-1911年
初演1911年6月13日 シャトレ座(パリ)
演奏時間35分

『ペトルーシュカ(Pétrouchka)』は、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882年-1971年)によって作曲された初期を代表する三部作の一つです。

「人形が人形に恋をする物語」が描かれており、ピアノが人形を表現し、オーケストラがそれに応えます。
ストラヴィンスキーは「リムスキー=コルサコフの弟子」としても知られていますが、この作品では師匠の影響から脱し、独創的な音楽が芽生えています。

ここではストラヴィンスキー『ペトルーシュカ』の解説と名盤を紹介したいと思います。

中身はロシア版『ピノキオ』

前作の『火の鳥』で成功を収めたストラヴィンスキーは、注目の若手作曲家の仲間入りをします。
そして、彼が次に作曲を始めたのは『春の祭典』でした。

 『春の祭典』は、「乙女が生け贄として差し出される、ロシアの異教時代の太古の儀式」が描かれています。

しかしその途中に、ストラヴィンスキーに新たなアイデアが生まれます。
それは「人形に命が吹き込まれる話」で、人形にはペトルーシュカという名前が付けられていました。
まさにロシア版『ピノキオ』です。

前衛的な音楽は、次第に支持を獲得する

ストラヴィンスキーがディアギレフ(ロシアの芸術プロデューサー)にその一部を聴かせると、ディアギレフはそれをバレエ音楽として完成させるよう頼みます。

 ディアギレフは、ロシア・バレエ団の創設者、主宰者です。
ストラヴィンスキーの『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』は、すべてディアギレフの委嘱によるものです。
ロシア・バレエ団は彼が亡くなるまでパリを中心に活動し、多くのバレエ音楽を委嘱し初演しました。

パリのシャトレ座での初演では、『火の鳥』までとはいかないまでも成功を収めます。
前衛的な音楽と舞台は批評家に酷評もされましたが、聴衆には次第に受け入れられていきます。

同時に、ストラヴィンスキーの名声も高まっていきます。
そして次作『春の祭典』で、彼は『前衛的な若手作曲家』として注目の的になります。

『ペトルーシュカ』のあらすじ、曲の構成

1830年代の冬:サンクトペテルブルク

 命を吹き込まれた人形(ペトルーシュカ)が、人形に恋をする物語です。

第1場:謝肉祭の市場

「3体の人形」に命が吹き込まれる
フルートが街の賑やかさを表現します。
リムスキー=コルサコフの「100のロシア民謡集」の「復活祭の歌」やロシア民謡が流れ、踊りが繰り広げられます。

そこで音楽が突然やみ、小太鼓とティンパニが響きます。
するとシャルラタン(魔法使い)が現れ、人々は人形部屋に集まります。
そして、フルートのメロデイに合わせて「3体の人形」に命が吹き込まれます。

命が宿った人形は「ロシアの踊り」を踊りだします。

 ペトルーシュカ(ピエロ)、ムーア人、バレリーナの3体

ペトルーシュカはバレリーナに恋をしますが、バレリーナはムーア人を気に入ります。
ペトルーシュカは嫉妬し喧嘩となりますが、やがて3人は仲直りをし踊りだします。

シャルラタン(魔法使い)の合図で、3人は動かなくなり、次のシーンへと変わります。

第2場:ペトルーシュカの部屋

ペトルーシュカの片想いと苦悩
壁にはシャルラタン(魔法使い)の肖像画が飾られています。
ペトルーシュカが蹴飛ばされて、部屋に飛び込んできます。
ペトルーシュカはドアの外に出ようともがき、トランペットが彼の苦しみを表現します。

しばらくすると、バレリーナが入ってきます。
ペトルーシュカは喜びますが、バレリーナは彼の気持ちを受け入れず去っていきます。

ペトルーシュカは絶望し、その場に倒れ込みます。

第3場:ムーア人の部屋

ペトルーシュカがムーア人との「恋のバトル」に敗れる
豪華な部屋で、ムーア人が寝転んでいます。
しばらくすると、ムーア人はヤシの実で遊び始めます。

そこにバレリーナが「おもちゃのラッパ」を吹きながら入ってきます。
次第にムーア人はバレリーナに興味を持つようになり、二人はワルツを踊りだします。

 ワルツの一部では、ワルツの始祖ヨーゼフ・ランナーの「シェーンブルンの人々」のメロディが流れます。

そして二人の恋が盛り上がってきたときに、ペトルーシュカが乱入してきます。
ペトルーシュカとムーア人の喧嘩が繰り広げられると、結果は「ムーア人の圧勝」となります。

ペトルーシュカは部屋から追い出されます。

第4場:謝肉祭の市場(夕方)とペトルーシュカの死

ムーア人がペトルーシュカを殺す
市場は夕方となり、さらに活気を増しています。
色とりどりの人物が次々と踊りを披露していきます。

しばらくすると、ペトルーシュカがムーア人に追われて登場します。
ムーア人はペトルーシュカを斬りつけると、ペトルーシュカは死んでしまいます。


ペトルーシュカの幽霊が登場し、幕が下りる
警官とシャルラタン(魔法使い)が現れると、シャルラタン(魔法使い)はペトルーシュカを人形に戻します。
しかし一件落着とはいきません。
ペトルーシュカの幽霊が現れ、シャルラタン(魔法使い)は恐怖の余り逃げ出します。

そしてそのまま消えるように音楽が終わっていきます。

ストラヴィンスキー『ペトルーシュカ』の名盤

ピエール・ブーレーズ&クリーヴランド管弦楽団、ニューヨーク・フィル

『ペトルーシュカ』も『春の祭典』も多くの名演奏が残されてきましたが、こちらのCDは半世紀前の1969年の録音です。
名盤として名高い、珠玉の1枚として認知されています。
緻密に計算された音楽は『ペトルーシュカ』だけでなく、もちろん『春の祭典』も必聴です。

 指揮:ピエール・ブーレーズ
『春の祭典』がクリーヴランド管弦楽団、『ペトルーシュカ』がニューヨーク・フィルハーモニックによる録音です。

ブーレーズは1991年にもクリーヴランド管弦楽団で『春の祭典』『ペトルーシュカ』を録音しています。

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