シューマンの「交響曲第1番」は、1841年に作曲されました。
「春」という副題は作曲者自体が付けたものです。
初演時は「春の交響曲」と呼ばれそれぞれの楽章に標題がありましたが、後に取り除かれました。
この作品はアドルフ・ベトガーの詩に霊感を得て書かれたとも言われています。
わずか数日で全体のスケッチを完成させ、2か月間で作品を完成させました。
ここではシューマン「交響曲第1番」の解説と名盤を紹介したいと思います。
シューマン「交響曲第1番」の演奏
ウィーンフィル(指揮:ファビオ・ルイージ)2006年
[00:00]第1楽章:Andante un poco maestoso – Allegro molto vivace
[12:09]第2楽章:Larghetto – attaca
[18:43]第3楽章:Scherzo. Molto vivace
[24:11]第4楽章:Finale. Allegro animato e grazioso
「クララとの結婚」の翌年に作られた
シューマンは1840年にクララと結婚します。
この1840年は「歌曲の年」と言われ、多くの歌曲の傑作が誕生しました。
この年だけで、二つの「リーダークライス」「ミルテの花」「女の愛と生涯」「詩人の恋」が作曲されました。
それまで歌曲を重要視していなかったシューマンにとっての大きな変化でもありました。
そして「歌曲の年」の翌年(1841年)に、「交響曲第1番」が作曲されます。
「交響曲第4番」も1841年に書かれました。
これはシューマンの作曲活動が「ピアノ・声楽作品から交響曲へと移る」重要な時期でした。
※「交響曲第4番」は、第4番と名付けられているが、2番目に書かれた交響曲
シューマンの創作意欲が盛んな時期
結婚後の幸福な数年間は、シューマンの作曲活動において充実した期間でした。
1842年には3曲の「弦楽四重奏曲」「ピアノ五重奏曲」「ピアノ四重奏曲」と言った多くの室内楽曲が作られます。
これらの3年間は
「1840年:歌曲の年/1841年:交響曲の年/1842年:室内楽曲の年」
と呼ばれることもあります。
シューベルト「交響曲第8番」の影響を受けた!?
シューベルトの死後、シューベルトの仕事机はそのまま保管されていました。
シューマンは1839年にシューベルト宅を訪れたときに、彼は長大な交響曲を発見します。
これこそが「交響曲第8番ハ長調」でした。
ここで「シューベルトは小規模な作品を作曲する作曲家」だと認識していたシューマンの考えは大きく覆されたそうです。
作品に感動したシューマンの熱意が実り、この「交響曲第8番」は初めて世に出ます。
同年友人メンデルスゾーンの指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によって、十数年の時を経て初演されました。
シューベルトの「交響曲第1番」はこの少し後に書かれています。
「第1番」は至る所でシューベルト「交響曲第8番」の影響を受けているとも評されています。
副題の「春」について
「交響曲第1番」には「春」という副題が付いています。
これは作曲者自身によって付けられたもので、そのぞれの楽章に「春の始まり」「たそがれ」「楽しい遊び」「春たけなわ」という標題が付いていました。
この交響曲自体も「春の交響曲」と当初は呼ばれていました。
これが後に取り除かれ今の形となっています。
友人メンデルスゾーンの指揮で初演
「交響曲第1番」の初演は、1841年3月31日にメンデルスゾーンの指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によって初演されました。
先ほどのシューベルト「交響曲第8番」と同じコンビでした。
※メンデルスゾーンはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の地位を上げたことで有名
このコンサートはピアニストの妻クララ主催でおこなわれたものでした。
ちなみにクララのプロデビューもライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会でした。(1828年、9歳の時)
曲の構成
第1楽章:Andante un poco maestoso - Allegro molto vivace
変ロ長調
春を告げるように序奏はじめにトランペットとホルンがファンファーレ風な動機を示す。
第2楽章:Larghetto - attaca
変ホ長調
第1楽章のコーダから派生した長い主題が弦によって奏でられる。
やがて出てくるトロンボーンの三重奏は、第3楽章の主題を暗示している。
音楽はそのまま休みなく第3楽章に入る。
第3楽章:Scherzo. Molto vivace
ニ短調
シューマンらしい優美で幻想的な音楽が印象的である。
第4楽章:Finale. Allegro animato e grazioso
変ロ長調
第1楽章冒頭を彷彿させる全合奏による序奏で始まる。
その後登場する第1主題も第1楽章からきている。
第2主題は2つの部分からなり、前半はピアノ曲集「クライスレリアーナ」の終曲からきている。
シューマン「交響曲第1番」の名盤
パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルパーヴォ・ヤルヴィによるシューマン交響曲全集録音の第1弾で、交響曲第1番「春」と第3番「ライン」が収録されています。
「シューマン愛」を公言しているヤルヴィは、シューマンの演奏を「作品にある感情の起伏や途方もないエネルギーを恥ずかしがらずに出さなければ、シューマンの本当の魅力が伝わらない」と語っています。
※2009年、2010年の録音
パーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvi, 1962年12月30日 - )
エストニア出身、アメリカ国籍の指揮者
ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ニューヨーク・フィル等、世界の主要オーケストラに客演しており、世界で引っ張りだこの指揮者の一人である。
N響、都響など日本のオケとも共演しており、2015年にはN響の初代首席指揮者にも就任した。
ドイツ・カンマーフィルとはベートーヴェン交響曲全曲(2006年-2009年)も録音している。
ドイツ・カンマーフィルハーモニー(ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団)
ドイツ・ブレーメンに本拠を置く室内オーケストラ
2004年にパーヴォ・ヤルヴィが芸術監督に就任してから国際的に評価を高めている。
レパートリーをバロックから現代音楽まで拡大しているが、その中心はベートーヴェンの交響曲である。
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