ヴェルディの作曲したレクイエムはモーツァルト、フォーレとともに「三大レクイエム」の一つに数えられます。
また「最も華麗なレクイエム」と言われることもあり、ヴェルディの数少ない宗教曲でもあります。
実はヴェルディはこれ以前にロッシーニに捧げるレクイエムを作曲しようとしましたが、周囲の協力を得られずとん挫した経験も持っています。

ここではヴェルディ「レクイエム」 の解説と名盤を紹介したいと思います。

小説家へ贈ったレクイエム

ヴェルディのレクイエムは、イタリアの小説家、アレッサンドロ・マンゾーニのために書かれました。
マンゾーニはヴェルディが青年時代より大好きだった小説家です。
楽譜が現存してないのが残念ですが、若き日のヴェルディはマンゾーニの詩で作曲もしています。

1873年のマンゾーニの死にヴェルディは深く悲しみました。
ヴェルディはあえて葬列には参加せず、のちに一人で墓参りをしたそうです。
そしてその後、ヴェルディはミラノ市長にレクイエムの提案をおこないます。
市長は受諾し、初演の費用は楽譜印刷以外は市が負担しました。

宗教曲としては異例の人気

初演はヴェルディの希望でサン・マルコ教会で演奏されました。
指揮はヴェルディがおこない、演奏はスカラ座のオーケストラ(100名)と合唱(120名)とソリストによるものです。
ソリストの4人のうち、3人は1872年の「アイーダ」の初演でも起用された3人でした。
まさにヴェルディのお気に入りの演奏家による演奏でした。

初演は大成功に終わり、何度もアンコールが叫ばれたそうです。

初演の数日後にはスカラ座で3度(1度はヴェルディが指揮)の再演がおこなわれています。
またアメリカやフランスでも1874年にすぐに再演されました。
そして1875年にはウィーンやロンドンでも演奏されます。
これは宗教曲としては異例の人気の高さでした。

作品の反応は様々

人気もすぐに出たレクイエムでしたが、初演の専門家の反応は様々でした。

「モーツァルトのレクイエム以来の傑作」との評価もありましたが、オペラ王・ヴェルディの作品です。
イタリアのオペラと言えばヴェルディ、ヴェルディと言えばイタリアオペラです。
やはり一般的な宗教曲とは一線を画します。
「聖職者の衣服をまとった、ヴェルディの最新のオペラ」「絶叫するばかりのコーラス」「怒号の連続」と評する意見もありました。
オペラの劇的表現を得意としていたヴェルディの作品ですので、評価が別れることはある程度仕方のないことかもしれません。

ただヴェルディのレクイエムは初演から現在に至るまで高い人気を誇っています。
その事実がこの作品の偉大さを物語っているのではないでしょうか。

ヴェルディ「レクイエム」 の名盤

ムーティのレクイエムが価格がお求め安くなって再版されました。
ムーティにとって2度目のヴェルディ「レクイエム」 の録音で、1987年のライブ録音です。
軽やかな聴きやすいテンポで、見事にコントロールされたオーケストラと合唱が聴きごたえがあります。
また、豪華なソリストたちも見逃せません。

シェリル・ステューダー(ソプラノ)
ドローラ・ザジック(メゾ・ソプラノ)
ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)
サミュエル・ラメイ(バス)

クラシック初心者の方もそうでない方も満足できる1枚ではないでしょうか。

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