項目データ
作曲1951年完成
初演1952年1月30日(大阪朝日会館 藤原歌劇団)
台本木下順二の戯曲『夕鶴』
演奏時間1時間50分

團伊玖磨(だん いくま/1924年-2001年)のオペラ『夕鶴』は、日本のオペラを代表する作品です。

 日本人が作曲したオペラが上演される回数は、決して多くはありません。
そんな中で、『夕鶴』は舞台で鑑賞する機会の多い数少ない作品の一つです。

木下順二の戯曲『夕鶴』を台本としており、木下の要望により「一言一句戯曲を変更せずに」オペラは作曲されました。
話の題材には、日本人なら誰もが知っている『鶴の恩返し』が使われています。

ここでは、團伊玖磨のオペラ『夕鶴』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

人物名備考
与ひょう(テノール)百姓
つう(ソプラノ)与ひょうの女房。鶴
運ず(バリトン)
惣ど(バス)

オペラが始めるまでのストーリー

ある日、与ひょう(百姓)は罠にかかった鶴を助けます。
鶴は人間に姿を変え、つうとして与ひょうを訪れます。

二人は共に生活を始めます。

『夕鶴』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

与ひょうとつう(鶴)は、二人で幸せに暮らしています。

そこに悪知恵の働く、運ずと惣どが現れます。
彼らは、金儲けのために「つうに布を織らせる」ように与ひょうに持ち掛けます。

 生きた鶴の羽で織られた「つうの布」は高値で取引されます。

つうは鶴に姿を変え、最後の力を振り絞り布を織ります。
与ひょうはその姿を覗いてしまいます。

鶴の姿を覗かれてしまったつうは、与ひょうのもとから消えます。
与ひょうがつうの織った布を大事に抱きかかえる中で、オペラは終わります。

その1:『夕鶴』のあらすじ

幸せに暮らす与ひょうとつう

子供たちが「おばさんあそぼう!」と騒ぐ声で、眠っていた与ひょうは起こされます。
つうは外出していたので、代わりに与ひょうが子供たちと遊びます。

子供たちがいなくなると、つうが家に戻ってきます。
与ひょうつうの二人は、幸せそうに会話を交わします。

運ずと惣どがつうの噂をしている

シーンは変わり、運ず惣どが登場します。

二人は、与ひょうが急に美しい女房を持ったことを噂します。

さらに
「つうが織った布が高値で売れて、与ひょうが金持ちになった。」
「しかし、つうは布を織った姿を見せてくれないらしい。」
「布は、生きた鶴の羽で織られているらしいぞ。」

と噂します。

運ずと惣どが金儲けを企む

運ずと惣どは、つうの元に向かいます。
二人はつうに話しかけますが、会話が通じません。

二人は「まるで気配が鳥のようだ」と驚きます。
そして「水の中に入った人が、鶴になって出てきた噂」を思い出します。

二人は、
「あれが本物の鶴の千羽織なら金になる。」
「与ひょうに頼んで布をたくさん織らせよう!」

と企みます。

与ひょうが金に目がくらみ、二人に丸め込まれる

運ずと惣どが、与ひょうを訪れます。

二人は「つうに布を織らせてくれ。」と頼みます。
しかし与ひょうは「布を織ると、つうがやせ細っていくから嫌だ。」と答えます。

与ひょうが「鶴を助けたことがある」という話をすると、二人は「つう=鶴」ということを信じ始めます。

二人が「布を織れば何百両も儲けられるぞ!」と訴えます。
与ひょうは金に目がくらみ、二人の話に乗ります。

その2:『夕鶴』のあらすじ

つうは「与ひょうがだんだん変わっていく」ことを不安に思っている

一方、つうは「純粋だった与ひょうが、だんだん変わっていく」ことに不安を募らせます。
そして、与ひょうと一緒に静かに生活をしたい想いを歌い上げます。

与ひょうがつうに「金儲けのために、布を織ってくれ!」と頼む

そこに与ひょうが帰ってきます。
二人に言いくるめられた与ひょうは「都で金儲けをしてくるから、布を織ってくれ!」とつうに頼みます。

つうは人間ではなく鶴なので、お金の話が通じません。
つうは混乱し、与ひょうと喧嘩になります。
怒った与ひょうは、つうに「布を織らないと、おらは出ていく!」と叫びます。

つうは錯乱し家を飛び出し、雪の中で気を失います。

つうが「布を織る」ことを決意し、織りはじめる

与ひょうに連れられて戻ってきたつうは、お金の袋を見つめます。
つうは「みんなお金のせいだ!布を織ってお金を稼がないと、与ひょういなくなってしまう!」と歌います。

ついに、つうは最後にもう一度布を織ることを決意します。
そして、二人でいつまでも穏やかに暮らせることを夢見ます。

 つうは命を削りながら、自分の羽で布を織っています。
これ以上布を織り続けることは死を意味し、つうもそれを自覚しています。

つうは「決して覗き見をしてはいけない。」と与ひょうに語り、機部屋へ移動し布を織り始めます。

「つう=鶴」だと明らかになる

そこに運ずと惣どが現れ、機部屋を覗こうとします。
与ひょうの制止を振り切り部屋を除くと、そこには「鶴が布を織っている姿」が見えました。
二人は金になる布が手に入ると確信し、家に帰っていきます。

一方覗くのを我慢していた与ひょうですが、ついに機部屋を覗いてしまいます。
与ひょうは「つうが部屋におらず、鶴がいるだけ」であることに驚き、雪の降る外へ飛び出しつうを探しに行きます。

 与ひょうだけが、「つうが鶴である」ことに気づいていません。

つうが鶴となり、姿を消す

翌日、雪の中で気を失った与ひょうは、運ずと惣どに助けられます。

そして3人の元に、布を織り終えたつうが現れます。
つうは最後の力を振り絞り布を織り、すっかり衰弱してしまっています

つうは与ひょうに
「あれほど頼んだのに、なんで見たの」と嘆きます。
そして
「いつまでも元気でいてね」
「私を忘れないでね、私もいつまでも忘れないわ」

と愛を語ると、つうの姿は突然消えてしまいます。

子供たちの歌が聞こえる中、遠くに鶴が飛ぶ姿が見えます。
与ひょうがつうの織った布を大事に抱きかかえる中で、オペラは終わります。

『夕鶴』の演奏

1970年5月に録音された『夕鶴』です。
数少ない『夕鶴』の録音の中で、名盤として高い評価を得ています。
往年の日本人の名歌手たちの名演が堪能できます。

つう:伊藤京子
与ひょう:丹羽勝海
運ず:栗林義信
惣ど:平野忠彦
子供たち:ビクター少年合唱隊・杉並児童合唱団

読売日本交響楽団
指揮:若杉弘

その他の曲目一覧(目次)

その他の作品・あらすじ・歌詞対訳などは下記リンクをクリックしてください。

クラシック作品(目次)

オペラ作品(目次)

ミュージカル作品(目次)

歌詞対訳(目次)

ピアノ無料楽譜(目次)