カミーユ・サン=サーンス(Camille Saint-Saëns/1835年-1921年)は生涯で4つの交響詩を残しています。
その中でも、3番目の作品である『死の舞踏』(Danse macabre)は最も有名な作品です。
今では人気のある作品としてコンサートで取り上げられますが、初演当時はその不気味さゆえか不評だったそうです。
交響詩『死の舞踏』の演奏
ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団(ロンドン)
指揮:レオポルド・ストコフスキー
元々は声楽の作品
『死の舞踏』は元々は、1872年にピアノ伴奏の歌曲として作曲されました。
歌詞はフランスの詩人アンリ・カザリス(Henri Cazalis/1840–1909)のもので、フランスの迷信に基づいたものです。
それを2年後(1874年)にオーケストラ用に編曲したものが、交響詩『死の舞踏』です。
作品は歌曲に比べて大きくなり、声楽部分はヴァイオリンソロに割り当てられました。
フランスの迷信とは?
物語のもとは、フランスの迷信です。
迷信では、この死の舞踏は毎年ハロウィンの真夜中に繰り広げられます。
死神は死者たちを呼び起こし、死者たちは雄鶏が鳴くまで踊り続けます。
そして夜明けとともに去り、翌年まで眠り続けるのだそうです。
詩に合わせて音楽を表現している
またサン=サーンスは、詩に合わせて次のような描写的な音楽を書いています。
・真夜中の12時にハープがDを12回鳴らし、死神が墓場に登場する
・ヴァイオリンソロがE♭にチューニングされた不協和音で、死神のヴァイオリンを表現する
・フルートソロが死者のダンスを不気味に奏でる
・シロフォンがガタガタと骨の鳴る音を表現する
また曲ではグレゴリオ聖歌の『怒りの日』の旋律が用いられたり、ワーグナーの『さまよえるオランダ人』の第3幕を思い出させる音楽も登場します。
歌曲『死の舞踏』の演奏、歌詞、意味
元となった歌曲を歌詞(フランス語)と対訳(日本語訳)をそえて紹介します。
真夜中に死神のダンスが不気味に繰り広げられ、夜明けと共に死神が消えていく物語です。
歌曲『死の舞踏』の歌詞と意味
Zig et zig et zig, la mort cri en cadence
Frappant une tombe avec son talon,
La mort à minuit joue un air de danse,
Zig et zig et zag, sur son violon.
ジグ(タップダンスの音)、ジグ、ジグ リズミカルに死神が
かかとで墓を鳴らし
真夜中に死神がダンスする
ジグ、ジグ、ジグ、彼のヴァイオリンで
Le vent d’hiver souffle, et la nuit est sombre,
Des gémissements sortent des tilleuls;
Les squelettes blancs vont à travers l’ombre
Courant et sautant sous leurs grands linceuls,
冬の風が吹き、夜は更け
菩提樹は大きく唸る
白い骸骨が暗闇を飛び渡り
大きな(死体を包む)白布の下を飛び跳ねる
Zig et zig et zig, chacun se trémousse,
On entend claquer les os des danseurs,
Un couple lascif s’asseoit sur la mousse
Comme pour goûter d’anciennes douceurs.
ジグ、ジグ、ジグ 皆は不安がる
ダンサーの骨がドアをノックするのが聞こえて
みだらなカップルはコケに座り
まるでかつての喜びを味わっているかのようだ
Zig et zig et zag, la mort continue
De racler sans fin son aigre instrument.
Un voile est tombé! La danseuse est nue!
Son danseur la serre amoureusement.
ジグ、ジグ、ジグ 死神は続く
終わりなく鋭くヴァイオリンは鳴り
ヴェールは脱げて!ダンサーは裸に!
彼女のダンサー(男)は彼女を情熱的に抱きしめる。
La dame est, dit-on, marquise ou baronne.
Et le vert galant un pauvre charron
Horreur! Et voilà qu’elle s’abandonne
Comme si le rustre était un baron!
彼らは「その女性は男爵夫人か侯爵夫人だ」と言う。
そして勇敢な若者は貧しい車大工
なんと残酷なことだ!彼女は身をゆだねる
まるで田舎者が男爵だったかのように
Zig et zig et zig, quelle sarabande!
Quels cercles de morts se donnant la main!
Zig et zig et zag, on voit dans la bande
Le roi gambader auprès du vilain!
ジグ、ジグ、ジグ なんというダンス(サラバンド)だ!
死者たちが皆、手をつなぎ輪になっている
その見える群衆では
王様と農民が一緒に踊っている
Mais psit! tout à coup on quitte la ronde,
On se pousse, on fuit, le coq a chanté…
Oh! La belle nuit pour le pauvre monde!
Et vive la mort et l’égalité!
だけどああ!突然ダンスは終わり
彼らは押し合って飛び去って行く 雄鶏が鳴き
ああ!貧しい世界にある美しい夜!
そして永遠に生きる死と平等
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