目次
項目 | データ |
---|---|
初演 | 1842年3月9日 ミラノ・スカラ座 |
原作 | 旧約聖書 |
台本 | テミストークレ・ソレーラ |
演奏時間 | 2時間 |
『ナブッコ(Nabucco)』は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)によって作曲されたオペラで、彼にとって3作目のオペラです。
彼にとって初めての大ヒット作で、この大成功でヴェルディは一躍有名になりました。
第3幕の合唱「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って(Va, pensiero)」は特によく聴かれる旋律で、当時オーストリアの支配下に合ったイタリアを鼓舞しました。
またこの合唱部分は、ヴェルディ自身の葬儀でトスカーニの指揮によって演奏されました。
ここではヴェルディのオペラ『ナブッコ』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
登場人物 | 詳細 |
---|---|
ナブッコ(バリトン) | バビロニアの王 |
フェネーナ(Sp/Ms) | ナブッコの娘。イズマエーレの恋人。 |
アビガイッレ(ソプラノ) | ナブッコと奴隷の間の子供。フェネーナの姉。 |
イズマエーレ(テノール) | エルサレム王の甥。フェネーナの恋人。 |
ザッカリア(バス) | ヘブライ人の大祭司。 |
『ナブッコ』の簡単なあらすじ
時間のない方のための「簡単なあらすじ」
【第1幕】
ナブッコ(バビロニア軍)がヘブライ人(エルサレム)を攻撃します。
ヘブライ人は敗退し、囚われの身となります。
イズマエーレは戦争中、母国を裏切り、フェネーナを助けます。
【第2幕】
アビガイッレ(ナブッコと奴隷の間の子供)は「自分が奴隷の子であるために王位につけず、フェネーナが王位継承者になる。」と知り、復讐を誓います。
神を冒涜したナブッコが雷に打たれ錯乱状態となり、アビガイッレが王座を奪います。
【第3幕】
アビガイッレの挑発に乗せられたナブッコが「フェネーナやヘブライ人の死刑の執行状」にサインをしてしまいます。
【第4幕】
正気に戻ったナブッコが、フェネーナとヘブライ人たちの処刑を止めに入ります。
復権したナブッコがヘブライ人たちを解放し、帰国を許します。
アビガイッレは毒を飲んで死にます。
第1幕:『ナブッコ』のあらすじ
エルサレムには人質・フェネーナ(敵国バビロニアの王女)がいる
エルサレムのソロモンの神殿の内部
ヘブライ人たちがバビロニア軍の侵攻を恐れ、神に祈りを捧げています。
大祭司ザッカリアがバビロニアの王女フェネーナ(人質)を連れて現れます。
フェネーナを指さし、「敵の王の子が、私たちに平和をもたらすだろう。」と歌います。(Sperate o figli/D'Egitto là sui lidi)
そこに、エルサレム王の甥イズマエーレが現れ、「敵が攻めてくる。」と告げます。
ザッカリアはイズマエーレにフェネーナを預けて、去っていきます。
「Sperate o figli/D'Egitto là sui lidi」
イズマエーレとフェネーナは敵国同士だが、想いを寄せあっている
イズマエーレとフェネーナは二人きりになります。
イズマエーレは「かつてバビロニアにいたときに、フェネーナが自分を牢獄から助けてくれた」ことを語り、
「私もあなたに自由への道を開きたい。(あなたを逃がしたい)」と告げます。
そこにイズマエーレに恋しているアビガイッレ(フェネーナの姉)が現れる。
そして
「バビロニア軍は既に神殿を占領した。」
「しかし、もしも私を愛してくれるのならば、私はあなたの民を救いましょう。」
とイズマエーレに語ります。
イズマエーレは「命は捨てられても、心は捨てられない。」と断ります。
イズマエーレがフェネーナを助け、自国から非難を浴びる
ナブッコ(バビロニア軍)が神殿に侵攻
敵は勢いを増し、ナブッコ王(敵)は神殿にまで侵攻してきます。
ザッカリアはフェネーナに短剣をかざし、
「神殿を汚すのであれば、お前の娘を刺す」
とナブッコに叫びます。
しかしフェネーナを刺そうとしたときに、恋人イズマエーレが止めに入ります。
フェネーナは父ナブッコのもとに逃げます。
怒ったナブッコは、「神殿に火をつけ、敵を虐殺しろ」と命じます。
ヘブライ人たちはイズマエーレの裏切りに怒り、混乱の中で幕が下ります。
第2幕:『ナブッコ』のあらすじ
アビガイッレ(ナブッコと奴隷の子供)が王座を狙い、復讐の炎を燃やす
ナブッコの宮殿
アビガイッレが手紙を持って登場します。
内容は、
「アビガイッレはナブッコと奴隷の間の子供だった。」
「それで、ナブッコは妹のフェネーナに王位を譲ろうとしている。」
というものでした。
アビガイッレはそのことに怒り、悲しみを歌います。(Anch'io dischiuso un giorno)
「Anch'io dischiuso un giorno」
そこに大司教が現れ、
「フェネーナがヘブライ人を解放している。これを止めてほしい。」
「私たちはあなたに王になって欲しいんだ。」
「既にナブッコが倒れたという噂も広げてあるから。」
と告げます。
アビガイッレは「私が王座に就きましょう。」と復讐の炎を燃やします。
ザッカリアが神に「自国の復活」を祈る
捕らわれたザッカリアが神に自国の復活の祈りを捧げ(Vieni, o Levita)、フェネーナの部屋に入って行きます。
入れ違いでイズマエーレが入ってきます。
イズマエーレは、周りにいた者たちに裏切り者だと非難されます。
しばらくすると、ザッカリアがフェネーナと共に戻ってきます。
ザッカリアは二人をかばいます。
そこに老臣アブダッロがフェネーナの前に現れ、「逃げて下さい。」と叫びます。
そして「ナブッコ王の死の噂が広まり、民衆がアビガイッレを求めている!」と告げます。
雷がナブッコの王冠に落ち、ナブッコは精神錯乱状態となる
アビガイッレの登場
そこにアビガイッレが現れ、「王冠を渡しなさい。」とフェネーナに告げます。
その時、ナブッコが群衆をかき分けて、登場します。
そして王冠を自分の頭に乗せます。
ナブッコは「神は滅んだ。神は唯一、それはお前たちの王(私)だけだ!」と傲慢に叫びます。
すると雷がナブッコの王冠に落ち、ナブッコは精神錯乱状態となります。
皆は、「天が罰を与え、雷を落としたのだ。」と恐れます。
ナブッコは「私から王位を奪うのは誰だ!」と歌います。
アビガイッレが落ちた王冠を拾い上げたところで、幕が下ります。
第3幕:『ナブッコ』のあらすじ
アビガイッレが王座についている
バビロニアの宮殿の空中庭園
アビガイッレとナブッコ
アビガイッレは王座につき、民衆がアビガイッレに忠誠を歌っています。
そして大司教がアビガイッレに「フェネーナやヘブライ人の死刑の執行状」を手渡します。
そこにナブッコがボロボロの姿で現れます。
ナブッコはアビガイッレが王座にいることに驚き、怒りをあらわにします。
ナブッコが「死刑の執行状」にサインをしてしまう
ナブッコはアビガイッレに挑発され、急かされ「死刑の執行状」にサインをしてしまいます。
ナブッコはその中に娘のフェネーナもいることに気付きますが、アビガイッレは「もう救うことはできない。」と答えます。
ナブッコは「この奴隷が」となじり、「アビガイッレが奴隷の生まれであることが書かれた書類」を見せます。
アビガイッレはその書類を破り捨てます。
ナブッコは「娘を私に返してくれ」と懇願するが、アビガイッレは全く聞き入れません。
捕虜たちが故郷を想い歌い上げる
ユーフラテス川の河畔
ヘブライ人たちは捕虜となり、働かされています。
そしてここで、故郷を想い祈りが捧げられ、「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って(Va, pensiero)」が歌われます。
「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って(Va, pensiero)」
ザッカリアは
「立ち上がれ、苦悩に満ちた兄弟たちよ」
「恥ずべき鎖は未来ではなくなるだろう」
とバビロニアの滅亡を予言し、皆を鼓舞します。
第4幕:『ナブッコ』のあらすじ
ナブッコが正気を取り戻す
ナブッコは深い眠りから覚め、自分が鎖に繋がれていることに気付きます。
舞台裏から「フェネーナに死を!」という叫びが聞こえます。
ナブッコは神を冒涜したことを悔います。(Dio di Giuda!)
「Dio di Giuda!」
そこに老臣アブダッロが現れます。
アブダッロはナブッコが正気に戻っていることを喜びます。
ナブッコは彼らを率いてフェネーナを助けに向かいます。
そして「私は王に返り咲く」と力強く歌います。
ナブッコがヘブライ人を解放する
空中庭園
フェネーナとヘブライ人たちの処刑が行われようとしています。
そこにナブッコと兵士たちが現れ、死刑を止めに入ります。
ナブッコが兵士たちに「(バビロニアの神を祀った)忌わしき偶像を壊せ」と命じると、偶像は自然に壊れます。
皆は「神の奇跡だ。」と驚き、全能なるエホヴァの神を称えます。
ナブッコはヘブライ人たちに帰国を許します。
アビガイッレは毒を飲んで、ナブッコやフェネーナに許しを請いながら息を引き取ります。
ザッカリアが「エホヴァの神に仕える者は、王の中の王になるであろう。」と歌い全幕が終わります。
ヴェルディ『ナブッコ』の映像
2001年、メトロポリタン歌劇場でのライブ映像です。
アンコールで第3幕の合唱「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って(Va, pensiero)」が歌われています。
マリア・グレギーナ(アビガイッレ役)が絶賛を浴びた公演ですが、ホアン・ポンス(ナブッコ役)をはじめとする男声陣も必聴です。
メトならではの豪華な演出も、とても迫力があります。
役名等 | 演奏 |
---|---|
ナブッコ | ホアン・ポンス |
アビガイッレ | マリア・グレギーナ |
ザッカーリア | サミュエル・ラメイ |
イズマエーレ | グゥイン・ヒューズ・ジョーンズ |
フェネーナ | ウェンディ・ホワイト |
演奏 | メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団 |
指揮 | ジェイムズ・レヴァイン |
演出 | イライジャ・モシンスキー |
その他の曲目一覧(目次)
その他の作品・あらすじ・歌詞対訳などは下記リンクをクリックしてください。