項目データ
作曲年1808年
初演1808年12月22日
献呈ロプコヴィッツ侯爵、ラズモフスキー侯爵
演奏時間45分程度

ベートーヴェン交響曲第6番は、その名の通りベートーヴェンの作曲した6番目の交響曲です。
日本では「田園」の名称で親しまれています。

交響曲第5番の「運命」は正式な名称ではありませんが、「田園」はベートーヴェン自身が名付けた標題です。
ベートーヴェンが自作に標題つけた珍しい作品のうちの一つで、唯一の標題がつけられた交響曲です。

この時期はベートーヴェンの創作意欲が最も高かった時期で、多くの傑作が生まれました。

 同じ頃に作曲された作品として
1808年:交響曲第5番『運命』
1808年:合唱幻想曲
1809年:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』
1810年:エリーゼのために
1810年:ピアノソナタ第26番『告別』
などが挙げられます。

また「田園」では第3楽章からは楽章が途切れることなく連続して演奏されます。
これは、シューマン、メンデルスゾーン、リストなどの後世の偉大な作曲家に大きな影響を与えました。

ここではベートーヴェンの交響曲第6番の解説をするとともに、名盤を紹介したいと思います。

ベートーヴェン 「交響曲第6番(田園)」の演奏

[00:01]第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ ヘ長調 4分の2拍子
[12:10]第2楽章:アンダンテ・モルト・モッソ 変ロ長調 8分の12拍子
[23:48]第3楽章:アレグロ ヘ長調 4分の3拍子
[28:51]第4楽章:アレグロ ヘ短調 4分の4拍子
[32:20]第5楽章:アレグレット ヘ長調 8分の6拍子

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvi, 1962年- )
演奏:ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団(ドイツ・カンマーフィルハーモニー・Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen)

交響曲を発展させたベートーヴェン

ベートーヴェン以前から交響曲は存在しましたが、それまでの交響曲は大作と言えるものは多くありませんでした。
オーケストラの編成も一桁~40人程度で演奏され、100人近くの奏者を要する交響曲はありませんでした。

交響曲を壮大で対策へと発展させたのがベートーヴェンなのです。
モーツァルトは41曲の交響曲を書き、ハイドンにいたっては104曲の交響曲を書いています。
単純計算になりますが、ベートーヴェンの書いた交響曲が9つであるのを考えると、数字の面でも一作品においての熱量の違いを感じることが出来ます。

交響曲第6番「田園」の解説

交響曲第6番「田園」は交響曲第5番「運命」と同時に、1808年に初演されました。
ベートーヴェンが37歳の時のことです。
指揮はベートーヴェン自身が振りました。
「田園」は第5交響曲「運命」が完成した後、1808年の春から秋にかけて作曲されたと言われています。
「運命」が5年もかけて作曲されたのを考えると、短期間で作られたと言えるかもしれません。

激しいベートーヴェンの印象とは少し異なる交響曲

「田園」は自然豊かなハイリゲンシュタットで作曲されたもので、まさに自然の豊かさと落ち着きが曲に表れています。
ベートーヴェンの作品では珍しく優雅で柔らかいのが特徴的で、交響曲第5番「運命」の迫力のある無駄のない音楽とは対照的です。
ベートーヴェンの交響曲は偶数番が穏やかだとよく言われます。
まさに穏やかな「田園」と激情の「運命」ですね。
第3楽章から終楽章までは切れ目なく演奏されており、このスタイルは「運命」でも見られます。

Beethoven

交響曲の新たな扉を開いた

これまでの交響曲はハイドンの完成させた形式により4楽章で構成されていました。
しかし、交響曲第6番「田園」は5楽章で構成されています。

また全曲に「田園(Pastorale)」という標題をつけただけでなく、各楽章にも描写的な標題が付けられました。
・第1楽章「田舎に到着したときの晴れやかな気分」
・第2楽章「小川のほとりの情景」
・第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」
・第4楽章「雷雨、嵐」
・第5楽章「牧歌 嵐のあとの喜ばしい感謝に満ちた気分」

 ドイツ語と英語では下記のように書かれています。
1:Erwachen heiterer Empfindungen bei der Ankunft auf dem Lande (Awakening of cheerful feelings upon arrival in the countryside)
2:Szene am Bach (Scene by the brook)
3:Lustiges Zusammensein der Landleute (Merry gathering of country folk)
4:Gewitter, Sturm (Thunder. Storm)
5:Hirtengesang. Frohe und dankbare Gefühle nach dem Sturm (Shepherd's song; cheerful and thankful feelings after the storm)

まさにこれまでの常識を打ち破った革新的で芸術的な作品なのです。
ベートーヴェンの作品の中では、交響曲第6番「田園」は交響曲第5番「運命」と並んで最も評価の高い作品の一つでもあります。

風景の描写ではない

田園という標題ですが、田園の風景を曲にしたわけではありません。
ベートーヴェンは「この交響曲は絵画的な描写を表現したものではない。人々の心の中に起こる田園での喜びの感情を描いたものだ。」と語っています。
ベートーヴェンが自然を愛したことはよく知られており、「ハイリゲンシュタットの田園風景」に彼は深い愛を感じたのでしょう。

また当時、「自然をテーマとした明るい音楽」が流行していました。
1798年にJ.H.クネヒトが発表した『自然の音楽的描写』がその代表例です。
ベートーヴェンはクネヒトの理論書を持っていたことがわかっています。
"「田園」はクネヒトに刺激を受けて生まれた可能性がある"とも言われています。

声楽が入った可能性も!?

「田園」のスケッチには、声楽を用いようとした形跡が残されています。
ベートーヴェンは「第九」で声楽・合唱を用い、その後の交響曲に多大な影響を与えました。

ベートーヴェンはこの頃から既に交響曲に声楽を取り入れることを考えていたのです。

交響曲第6番「田園」の名盤

「田園」には数多くの録音が残されています。
演奏の聴き比べをして、お気に入りの演奏も見つけたいですね。

「田園」の1枚目のCDを買うのであれば、間違いなくオススメできるCDです。
カラヤン指揮・ベルリン・フィルハーモニーのベートーヴェン交響曲全集が一度に手に入ります。
輸入盤で格安で購入できるだけでなく、音質も素晴らしいです。

カラヤンとベルリンフィルが脂に乗っている時期の作品です。
カラヤンの美学とベルリンフィルの名演が絡み合って、最高のハーモニーを奏でています。
カラヤンらしさが一番感じとれる時期かもしれません。

クラシック初心者の方は、このCDを買って損はないと思います。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan/1908年4月5日-1989年7月16日)
オーストリアの指揮者

1955年から1989年までベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者・芸術監督を務める。
ウィーン国立歌劇場の総監督やザルツブルク音楽祭の芸術監督も務めるなど、歴史上最も偉大な指揮者の一人である。
日本には11度も来日しており、日本人には小澤征爾が師事したことでも知られている。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)
世界を代表するオーケストラの一つで、日本において絶大な人気を誇る。
重厚なドイツ的サウンドを奏でながらも、バラエティに富んだプログラムを演奏し常に世界の最先端をリードしている。

クライバー&バイエルン国立管

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評価の大きく分かれるクライバー&バイエルン国立管による「田園」です。
録音の少ないクライバーの貴重な録音で、1983年11月7日のコンサートがライブ録音されました。
速いテンポで締まりのある演奏は、とても高い評価を得ています。

演奏が素晴らしいにもかかわらず評価が別れる原因は、「音質が悪い」ことです。
ただ音質は悪いですが、一度は聴いておきたい伝説的コンサートに間違いありません。
コンサートの盛り上がりは、演奏終了後の観客の拍手喝さいが物語っています。

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