目次
項目 | データ |
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初演 | 1881年12月19日 モネ劇場(ベルギー王立歌劇場) |
原作 | ギュスターヴ・フローベール の小説『三つの物語』 |
台本 | ポール・ミーリエ、アンリ・グレモン |
演奏時間 | 2時間20分 |
『エロディアード(Herodiade)』は、ジュール・マスネ(Jules Massenet/1842年-1912年)によって作曲されたオペラです。
1881年に初演された作品で、彼のオペラ作品の中では初期の部類に入ります。
普仏戦争(1870-1871)に兵士として従軍したマスネは、終戦後に創作活動を再開します。
そして1878年からはパリ国立高等音楽院の教授として後進の指導に当たりました。
マスネは教師としてとても評価が高く「自分の考えを押し付けない」教え方で多くの音楽家を輩出しました。
ここではマスネのオペラ『エロディアード』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
人物名 | 備考 |
---|---|
エロディアード(メゾ・ソプラノ) | 王妃 |
エロデ王(バリトン) | ユダヤ王 |
サロメ(ソプラノ) | 踊り子・エロディアードの娘 |
ジャン(テノール) | 予言者 |
ファニュエル(バス) | 占星師 |
ヴィテリウス(バリトン) | ローマ総督 |
『エロディアード』の簡単なあらすじ
時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
エロデ王は妻がいるのにもかかわらず、サロメに恋をしています。
しかしサロメは王を相手にせず、ジャン(予言者)に恋をしています。
エロデ王は嫉妬も一因となり、ジャンに死刑を宣告します。
ジャンが処刑され、サロメも怒りと悲しみから自らの命を絶ちオペラが終わります。
エロディアードは娘を捨てて、エロデ王と再婚しました。
エロディアードとサロメが親子関係にあることはお互い気づいておらず、オペラが進むにつれて明らかになります。
第1幕:『エロディアード』のあらすじ
サロメはジャン(予言者)に恋している
エルサレム エロデ王の宮殿の広間
王への献上品を運んできたユダヤ人とサマリア人が、人種に分かれて喧嘩をしています。
ファニュエル(占星師)は「今は祖国で一致団結して、ローマ人に相対するときだ。」と諭します。
ファニュエルが舞台に残ったところに、不安げなサロメが登場します。
サロメは「母を探しても見つからない苦しみ」と「ジャンへの愛」をファニュエルに語ります。
「Il est doux, il est bon」(Salomé)
※予言者(ジャン)への熱い想いを歌うアリア
そしてジャンを探しに、その場を去っていきます。
エロデ王はサロメに恋している
二人が去ると、エロデ王が登場します。
エロデ王は「サロメが去った」ことに気づき、「サロメ、戻れ!お前が欲しい!」と彼女への愛を歌います。
サロメは王の妻の娘ですが、王との間に生まれた娘ではありません。
ジャン(予言者)がエロディアードに呪いの言葉を浴びせる
続いて、エロデ王の妻エロディアード(王妃)が現れます。
エロディアードはエロデ王に「私を侮辱するジャン(予言者)を処刑してほしい」「拒まないで!あなたのために、私はすべて(国と娘)を捨てたのよ!(Ne me refuse pas)」と訴えます。
「Ne me refuse pas」(Hérodiade)
しかし、エロデ王は「それはできない。彼はユダヤの民に愛されている。」と彼女の頼みを断ります。
そこにジャンが突然現れます。
彼はエロディアードを罵倒し呪いの言葉を浴びせます。
王と王妃は、ジャンの呪いから逃げるように宮殿へ去っていきます。
ジャンは「サロメの愛」を拒絶する
ジャンのもとに、サロメが現れます。
サロメはジャンへ愛を語りますが、ジャンは拒絶します。
そしてジャンは「お前の言葉は聞きたくない。私を愛するなら、夢の中で愛しなさい。」と諭し去っていきます。
第2幕:『エロディアード』のあらすじ
エロデ王が「サロメの幻影」に酔う
エロデ王の部屋
エロデ王は「女奴隷たちの踊り」を眺めています。
エロデ王はその中の一人から「愛の媚薬」を受け取り、それを飲みます。
すると「サロメの幻影」が現れ、エロデ王はサロメの幻影に酔いしれます。(Vision fugitive)
「Vision fugitive」(Hérode)
そこにファニュエル(占星師)が現れ「辺りは反乱と流血だらけです。」「近隣諸国はローマの属国になってしまったのですよ。」と恋で政務を蔑ろにする王を諭します。
そして王は「民衆の信頼を集めているジャン」を味方につけてローマ人を追い払おうと考えます。
民衆が「ローマへの聖戦」を誓うが、すぐに態度を一変しローマを称える
エルサレムの広場
エロデ王が民衆を「ローマ人を追い払うぞ」と鼓舞します。
民衆は「我らが望むのは死か独立だ!聖戦だ!」と応えます。
そこにヴィテリウス(ローマ総督)が現れます。
ヴィテリウスは陰謀を収めるために、民衆へ「彼らの願い」を尋ねます。
民衆は「イスラエルの神殿を返してくれ!」「そして祭壇で大司祭を拝めさせてくれ!」と頼みます。
ヴィテリウスは民衆の願いを受け入れます。
民衆は態度を一変し、ローマを称えます。
ジャンがローマの崩壊を暗示する
そこにサロメがジャン(予言者)と共に現れ、ジャンを「生ける神の予言者だ!」と称えます。
ジャンが「人間の弱き力は、永遠なものの足元に崩れる。正義は天より来るのだ!」と、ローマの崩壊を暗示して2幕は終わります。
第3幕:『エロディアード』のあらすじ
エロディアードの恋敵は「実の娘(サロメ)」だった
ファニュエル(占星師)の家
ファニュエルが「ジャンは何者だ!人間か!?神か!?」と星に語りかけています。
そこにエロディアード(王妃)が現れ「王の愛を私から奪ったのは誰なの?」と尋ねます。
エロディアードは、その女性が「自分の実の娘サロメ」だと知らされます。
彼女は娘が恋敵であることにひどく動揺し、去っていきます。
サロメは「ヘロデ王の愛」を頑なに拒絶する
ソロモンの神殿
ジャンはヴィテリウス(ローマ総督)によって神殿の地下牢に収監されています。
そこにサロメがジャンを探しに現れ、絶望した想いを歌い上げます。
続いてヘロデ王が登場します。
王は「私は王だ。お前は私のものになるのだ!」と強引に愛を求めます。
しかしサロメは「ほかに愛している人がいる」と頑なに拒絶します。
王は「お前たちの愛を罰してやる!」と怒り去っていきます。
嫉妬に狂った王が「ジャンとサロメに処刑」を宣告する
やがて神殿に民衆が集まってきて、皆は「ジャンに処刑」を求めます。
裁決を委ねられたヘロデ王は、最初はジャンを許そうと考えます。
しかし、そこにサロメが現れ「あなた(ジャン)は神と呼ばれています。私の命を捧げます。」と語ります。
ヘロデ王は「サロメの愛する人物がジャンだった」と知り、嫉妬に狂います。
そして王は激高し「二人とも処刑だ!」と宣告します。
第4幕:『エロディアード』のあらすじ
ジャンとサロメが互いの愛を歌う
神殿の地下牢
死を悟ったジャンが「私は正義と自由のために死ぬ。悔いはないがあの娘が目に浮かぶ…」と歌っています。(Adieu donc..)
「Adieu donc, vains objets qui nous charment sur terre」(Jean)
そこにサロメが現れ「私もあなたの腕の中で死にたい」と語ります。
しかしジャンはサロメに生きるように諭し、サロメを愛していることを認めます。
二人は「永遠の命。愛し合いながら死ぬことは、なんて素晴らしいことなんだ」と語りあいます。
しばらくすると大司祭が現れ二人は引き離されます。
サロメは王から許しが与えられ宮殿に連れていかれ、ジャンは処刑台へ連れていかれます。
ジャンが処刑され、サロメが自ら命を絶つ
宮殿の大広間
サロメがエロデ王とエロディアードに「ジャンを許してくれる」ように懇願します。
そしてサロメは「私が母親に捨てられて不幸にいるときに、ジャンが苦しみを癒してくれたんです!」と訴えます。
それにエロディアードの心が動かされます。
しかし、それは既にジャンの死刑が執行された後でした。
ジャンの死に怒ったサロメは短剣を抜き、エロディアードを刺そうとします。
するとエロディアードは「許して!私はあなたの母親なの!」と告げます。
サロメは「その汚らわしい体から私は生まれたの」と運命を恨み、自らの胸に短剣を刺し、命尽きます。
皆が恐れおののく中で、オペラが終わります。
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