項目データ
初演1859年2月17日 アポロ劇場(ローマ)
原作ウジェーヌ・スクリーブの戯曲「グスタフ3世、または仮面舞踏会」
台本アントニオ・ソンマ
演奏時間2時間15分

『仮面舞踏会(Un ballo in maschera)』は、イタリアのオペラ王、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)によって作曲されたオペラです。

 ヴェルディは『ナブッコ』『リゴレット』『椿姫』『アイーダ』などの傑作オペラを作曲し、彼の残したオペラの多くが現在でも世界中で上演され続けています。

当時、イタリア統一運動により検閲が厳しくされ、オペラの上演内容も制約が多かったそうです。
『仮面舞踏会』は、スウェーデンの国王グスタフ3世(1746年-1792年)が暗殺された事件を題材にしています。
そんな中、ローマは比較的検閲が厳しくなかったため、ヴェルディはこの地を初演の地に選んでオペラを作曲したと言われています。
検閲側の交渉により、舞台を欧州外(アメリカ)に移すことで上演は許可されました。
初演は大成功を収め、ヴェルディの人気はさらに高まることとなりました。

ここではヴェルディのオペラ『仮面舞踏会』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
リッカルド(テノール)ボストン在住のイギリス総督 
レナート(バリトン) リッカルドの腹心
アメーリア(ソプラノ)レナートの妻
オスカル:(ソプラノ)小姓
サムエル(バス)リッカルドに謀反を起こそうとしている。
トム(バス)リッカルドに謀反を起こそうとしている。
ウルリカ(メゾソプラノ)黒人の占い師
水夫シルヴァーノ(バリトン)

『仮面舞踏会』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」


【第1,2幕】
リッカルドはアメーリア(腹心レナートの妻)と「禁断の恋」をしてしまいます。
レナートがそれに気づき激高します。


【第3幕】
リッカルドは「レナート夫妻をイギリスに返して、アメーリアから身を引く」ことを決意します。
しかし、その意思が伝わる前に、仮面舞踏会でレナートがリッカルドを刺し殺してしまいます。
そして悲しみの中でオペラが終わります。


第1幕:『仮面舞踏会』のあらすじ

リッカルドはアメーリア(腹心レナートの妻)を愛している

場所はボストン、イギリス総督リッカルド邸

皆がリッカルドを称える中で、サムエルとトムが復讐の機会を狙っています。

そこにリッカルドが登場し、小姓オスカルが渡す「仮面舞踏会の招待客リスト」を見ます。
リッカルドはリストに密かに愛するアメーリア(腹心レナートの妻)の名前を見つけ、「彼女に再び会えるなんて!」と喜びを歌いあげます。(Amelia ah, dessa ancor!)

「Amelia ah, dessa ancor!」

サムエルとトムが「リッカルドへの復讐」を企む

リッカルドが舞台に残ると腹心レナートが現れます。
レナートは「リッカルドの悩みが自分の妻との恋」とは知らず、謀反を警戒しているのではと思いこみます。
そして「あなたの命には皆の人生がかかっています。」とリッカルドの命を心配します。

そこに判事が占い師ウルリカを連れてきて「この女を追放してください。」とリッカルドに判断を求めます。
一方で、オスカル(小姓)は「彼女の占いは当たっている。無罪にして下さい。」と提言します。

レナートの警告も気に留めず、リッカルドは「実際にウルリカに会って確かめよう。」と密かに彼女を訪れてみることを決めます。
サムエルとトムは「復讐の良い機会」だと笑います。

リッカルドが"お忍び"で占い師ウルリカを訪れる

ウルリカの家

煮え立つ大釜の前で、ウルリカが「地獄の王よ、いざ」と呪文を唱えています。(Re dell’abisso)
そこにリッカルドが「猟師の変装」をしてこっそり現れます。

そこでは水夫シルヴァーノが手相を見てもらっており、「金と地位を手に入れる。」と予言されています。
占いを聞いていたリッカルドは「昇進の手紙」を書いて、そっとシルヴァーノのポケットに入れます。
シルヴァーノは手紙を見つけ「予言が当たった」と喜びます。

「Re dell’abisso」アリアは1:30辺りから

アメーリアが現れ、悩める恋をウルリカに相談する

そこにアメーリアが現れ「悩める恋を忘れる薬が欲しい。」とウルリカに頼みます。
ウルリカは「魔法の草を摘みに、夜中に処刑場に行きなさい。」と答えます。

物陰で聞いていたリッカルドは、自身もそこに行こうと決意します。

リッカルドに「死」が予言される

アメーリアが去ると、リッカルドが猟師のふりをして運勢を見てもらいます。(Di’ tu se fedele)
ウルリカは「お前は死ぬ運命だ。今日最初​​に手を握った友人によって。」と予言します。

「Di’ tu se fedele」

リッカルドは周りの人に手を差し出すが、誰も手を握りません。
そこに何も知らないレナートが現れ、リッカルドの手を握ります。

リッカルドは「レナートは私の腹心だ。占いは誤りだ。」と言い、ウルリカに占いの金を渡します。
サムエルとトムは「復讐の機会」を逃します。

第2幕:『仮面舞踏会』のあらすじ

リッカルドとアメーリアが禁断の愛を歌う

ボストン郊外の荒地

アメーリアが処刑場を訪れ、その恐ろしさを歌います。
そこに突然リッカルドが姿を現します。
アメーリアは夫を大切に思うが、次第に感情を抑えきれなくなり、激しい愛の二重唱が歌われます。(Oh, qual soave brivido)

「Oh, qual soave brivido」

そこに、リッカルドを心配して後をついてきたレナートが現れます。
レナートは「謀反者たちが迫ってきているので、逃げて下さい。」と忠告します。
アメーリアは夫レナートにばれぬように、ヴェールを深く被って顔を隠します。

リカッルドはレナートに「この婦人をヴェールを被らせたまま町まで送ってくれ。」と頼みます。

レナートが「妻の裏切り」に激高する

サムエルとトム

リッカルドが去ると、サムエルとトムが現れます。
二人はレナートと決闘を始めます。
それを止めに入ったアメーリアでしたが、その時ヴェールが落ちてしまいます。

レナートは「妻の裏切り」を知り、怒り狂います。
レナートは何かを決意し「明日の朝、私の家に来てくれ。」とサムエルとトムに告げます。
サムエルとトムは「悲劇が喜劇になった」と、笑い声をあげて去っていきます。

第3幕:『仮面舞踏会』のあらすじ

レナートが「リッカルドへの復讐」に燃える

レナートの書斎

レナートは妻アメーリアに「死んで神に慈悲を求めよ。」と命令します。
アメーリアは「死ぬ前に息子を抱きしめさせてください。」と頼みます。

レナートはリッカルドに裏切られたことに復讐心を燃やします。

サムエルとトムも「復讐の仲間」に加わる

そこにサムエルとトムが現れます。
レナートは「謀反の仲間に入れてほしい。」と頼みます。
そしてくじ引きで暗殺犯を決めると、それはレナートに決まります。

やがてオスカルが仮面舞踏会の招待状を持って現れます。
3人はこれを機に暗殺を実行しようと企てます。
皆の心情が絡み合った重唱が歌いあげられます。

リッカルドに「舞踏会の招待状(復讐の舞台)」が届く

リッカルドの書斎

リッカルドはレナート夫妻をイギリスに返して、アメーリアから身を引こうと考えています。
そして「あなたを失っても、私の胸の鼓動はあなたに届く。」と複雑な心情を歌いあげます。(Forse la soglia attinse)

「Forse la soglia attinse」

そこにオスカルが「見知らぬ女性から手紙を預かった。」と入ってきます。
その手紙には「舞踏会で命が狙われている。」と書かれていました。

しかし、リッカルドは「私が舞踏会に行かないと、臆病者と思われる。」と告げます。
そして「アメーリアともう1度会える。」と再び愛を燃え上がらせ、舞踏会に向かいます。

レナートがリッカルドを刺し殺す

仮面舞踏会の会場

暗殺者たちが身を隠して参加する中、オスカルがレナートの変装を見抜きます。

レナートはオスカルに「リッカルドはどのような変装をしている?」と尋ねます。
オスカルは「秘密だよ」(Saper vorreste)と答えますが、
押しに負け「黒のマントにピンク色のリボン」と、つい口を滑らせてしまいます。

「Saper vorreste」

アメーリアがリッカルドに「逃げてください。でないと死んでしまいます。」と懇願します。
リッカルドは「あなたが愛してくれるなら、私は運命を気にしない。」と答え、「明日、レナートと故郷に帰りなさい。お別れだ。」と告げます。

そこにレナートが割って入り、リッカルドを刺します。

リッカルドは
「私は確かにアメーリアを愛したが、彼女は潔白だ。」
「お前たちはイングランドに帰ることになっている。」
「私はお前の名誉も、彼女の心も傷つけたくはなかった。」
と語り、命を落とします。

レナートは過ちを後悔し、悲しみの中でオペラが終わります。

『仮面舞踏会』の映像

2016年3月:バイエルン国立歌劇場(ミュンヘン)
当時80歳目前の巨匠ズービン・メータが、かつて総監督も務めたバイエルン州立歌劇場で振った『仮面舞踏会』です。
これは彼にとって初めての『仮面舞踏会』の指揮として話題を呼びました。

現代のテノール歌手の最高峰の一人として数えられるピョートル・ベチャワのリッカルド役は必聴です。
アニヤ・ハルテロスも、自身初めてのアメーリア役で素晴らしい歌声を届けてくれます。

役名等演奏
リッカルドピョートル・ベチャワ
レナートジョルジュ・ペテアン
アメーリアアニヤ・ハルテロス
ウルリカオッカ・フォン・デア・ダムラウ
オスカルソフィア・ フォミナ
シルヴァーノアンドレア・ボルギーニ
サムエルアナトーリ・シフコ
トムスコット・コナー
合唱バイエルン国立歌劇場合唱団
管弦楽バイエルン国立歌劇場管弦楽団
指揮ズービン・メータ
演出ヨハネス・エラート

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