項目 データ
初演 1858年10月21日 ブッフ・パリジャン座(パリ)
原作 ギリシア神話のオルペウスの悲劇(オルフェとエウリディーチェ)のパロディ
台本 エクトル・クレミュー、リュドヴィク・アレヴィ
演奏時間 2時間30分

『天国と地獄(Orphée aux Enfers)』ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach/1819年-1880年)によって作曲されたオペレッタです。
フランス語のタイトル通りに『地獄のオルフェ』と日本語訳されることもあります。
劇中で演奏される「運動会でよく流れる音楽」は、誰もが耳にしたことのあるお馴染みのメロディーです。

 後半で幾度か「運動会の音楽」が流れ、オペレッタ最後もこのようにお馴染みの音楽で飾られます。

オッフェンバックはパリに劇場を所有し、生涯で97作品ものオペレッタを生みだしました。
その中でも最大のヒット作となったのが『天国と地獄』で、彼にとって30作目の作品でした。
初演から大ヒットしロングランを成し遂げ、赤字だった彼の劇場経営の支えにもなりました。

ここではオッフェンバックのオペレッタ『天国と地獄』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物 詳細
ユリディス(ソプラノ)
オルフェ(テノール) ユリディスの夫。夫婦関係は良くない。
ジュピテール(バリトン) 神々の王
プリュトン(テノール) 地獄の大王、羊飼いに化けて下界に降りている
世論(メゾソプラノ) 物語を道徳的な方向へ導こうとする
キュピドン(ソプラノ) 恋の神
ディアヌ(ソプラノ) 狩猟の女神
ヴェニュス(ソプラノ) 愛と美の女神
ジュノン(ソプラノ) ジュピテールの妻
スティクス(テノール) プリュトンの召使。元国王
メルキュール(テノール) 神々の召使
ミネルヴ(ソプラノ) 智の女神

『天国と地獄』の簡単なあらすじ

 物語は『ギリシャ神話』のパロディです。
時間のない方のための「簡単なあらすじ」
【第1幕】
オルフェとユリディスの夫婦は、既に余り仲が良くありません。

そんな時、ユリディスが蛇に噛まれて死んでしまいます。
オルフェ(夫)は世論に促されて、仕方なく妻の救出にあの世に向かいます。
そして、オルフェは建前で「妻を返してください。」とジュピテール(神々の王)に頼みます。


【第2幕】
オルフェは「この世に戻るまで、妻を振り返らない」ことを条件に、妻を返してもらいます。
しかしジュピテールが後ろに雷を落としたことに驚き、オルフェは後ろを振り返ってしまいます。

オルフェとユリディスは予期せぬことで決別してしまいます。
しかし元々愛し合っていなかったため、オルフェは喜びます。

そして皆が楽しく歌う中で「ギリシャ神話のパロディ」の幕は降ります。


モンテヴェルディ『オルフェオ』やグルック『オルフェオとエウリディーチェ』は、同じギリシャ神話を基にした真面目な物語です。

第1幕:『天国と地獄(地獄のオルフェ)』のあらすじ

世論が「主人を裏切ろうとしている婦人は、私に注意してください!」と語り幕が上がります。

オルフェ夫婦は、仲が悪い

ギリシアのテーバイ郊外の野原
ユリディス(オルフェの妻)は、夫婦仲がよくありません。
彼女はアリステ(羊飼い)のために花を摘み、彼の小屋へ投げ入れています。

そこにオルフェ(音楽院長)が現れ、「妻を浮気相手と間違えて」ヴァイオリンを奏でだします。
二人は夫婦喧嘩となります。

そこでオルフェが「麦畑に、アリステ(妻の浮気相手)への罠を仕掛けた」と言うので、ユリディスはアリステを助けに向かいます。

 アリステ(羊飼い)の正体は「地獄の大王プリュトン」です。
オルフェの「罠を仕掛けた」というセリフは、プリュトンが吹き込んだものでした。

死んだユリディスが、地獄へ向かう

ユリディスが現れると、アリステ(羊飼い、地獄の大王)はわざと麦畑に入っていきます。
そしてユリディスが彼を追って麦畑に入ると、彼女は毒蛇に噛まれて死んでしまいます。

夫婦仲の悪いユリディスは死を喜び、地獄の大王の姿に戻ったプリュトンに連れられて地獄へ向かいます。

 プリュトンはユリディスを手に入れるために、彼女をわざと死なせました。

オルフェは「死んだ妻」を仕方なく追う

一方、オルフェも妻が死んだことを喜んでいます。
しかし世論が現れ「世論には逆らえません。妻を追いなさい!」と忠告します。

オルフェは仕方なく、世論と一緒に妻の後を追います。

「ユリディスの事件」は神々の世界にまで届いている

オリンポス(天国)の山上
神々が「ディアヌ(狩猟の女神)の角笛」で目を覚まします。

ディアヌは「恋人がいなくなった!」と嘆いています。
するとジュピテール(神々の王)が「お前の名誉を守るために鹿に変えたよ。」と答えます。

神々は暴君ぶりを非難し、「では下界の女性失踪事件(ユリディスのこと)も、あなたの仕業ですか?」と問います。
ジュピテールはそれを否定し、「怪しいやつが思い当たるから、それをメルキュール(神の使い)に調べさせてるところだ。」と答えます。

プリュトンは「ユリディスを地獄に連れて来ていない」と嘘をつく

調査を終えたメルキュールは、ジュピテールに「プリュトン(地獄の大王)がユリディスと一緒に地獄に帰ってきました。」と報告します。
ジュピテールはプリュトンを呼び出し「お前は妻を殺して夫から奪ったな!」と問い詰めますが、プリュトンはしらを切ります。

そしてプリュトンが「ジュピテールの素行の悪さ(女癖など)」を非難すると、神々もそれに続き一斉にジュピテールを非難します。

オルフェが仕方なく「妻を返して!」と訴え、ジュピテールが地獄へ向かう

その途中に、世論とオルフェが現れます。
オルフェは世論に促され、仕方なく「ユリディスをプリュトンに奪われました。どうか返してください。」とジュピテールに訴えます。

そしてジュピテールたちは、地獄へと向かいます。

第2幕:『天国と地獄(地獄のオルフェ)』のあらすじ

ユリディスは「プリュトンの部屋」で退屈している

プリュトン(地獄の大王)の部屋
ユリディスは部屋で暇を持て余しています。
そこにスティクス(プリュトンの召使)が現れます。

 ユリディス・・・オルフェの妻。蛇に噛まれて死に、プリュトン(地獄の大王)に地獄に連れてこられた。
 スティクス・・・プリュトンの召使。かつては国王だった。

スティクスはユリディスに「私が今国王なら、君は女王だ…」と愛を告白します(Quand j'étais roi de Béotie)が、ユリディスは全く相手にしません。

"Quand j'étais roi de Béotie"

ジュピテールが「蝿に変身」し、「ユリディスの部屋」に侵入する

そこにプリュトンが、ジュピテールたちと帰ってきます。
スティクスは、慌ててユリディスを隠します。

ジュピテールはユリディスを探しますが、プリュトンは「私は彼女をさらってません!」としらを通します。

しかし勘の働くジュピテールは「怪しい部屋(ユリディスがいる部屋)」を見つけます。
そしてキュピドン(恋の神)によって、ジュピテールは「蝿に変身」し「ユリディスの部屋」に鍵穴から侵入します。

ジュピテールは「ユリディスの逃走計画」を立てる

蝿に変身したジュピテールが、口説くように「蝿の歌」を歌いだします。
すると退屈していたユリディスは、蝿とじゃれ合いだします。

続いてジュピテールが正体を明かすと、ユリディスは「私をオリンポス(天国)に連れてって!私はあなたのものよ!」と言います。
ジュピテールは「変装して宴会に来なさい。そして一緒に逃げよう。」と答えます。

"Il m'a Semble sur mon Epaule"(蝿の二重唱)

プリュトンに見破られ「ユリディスの逃走計画」は失敗する

地獄
天国と地獄の神々が宴会をし、バカ騒ぎをしています。
ユリディスもバッカスの巫女に変身し、その輪の中にいます。

そして騒ぎの中でユリディスは逃げようとしますが、プリュトンに見つかってしまいます。
プリュトンはジュピテールに「もうすぐ夫(オルフェ)がここに来ますよ!あなたは夫に"ユリディスを返す"って約束したでしょ!」と責め立てます。

オルフェは妻(ユリディス)を連れて地上に向かう

そこにオルフェが三途の川を渡って現れます。
オルフェは「妻は嫌な奴だけど…」と乗り気ではありませんが、ジュピテールに妻を返すよう頼みます。

ジュピテールは「地上に戻るまで、後ろを振り返って妻を見てはいけない。」ということを条件に、ユリディスを返します。
そしてオルフェは妻を連れて、地上に向かいます。

ジュピテールがオルフェに無理やり後ろを向かせる

「本当のギリシャ神話」では、オルフェが後ろを振り向き、悲劇が起きます。
しかし、オルフェはなかなか後ろを向きません。

ジュピテールは後方に雷を落とし、無理やりオルフェに後ろを向かせます。

オルフェ夫婦が決別し、愉快に物語が終わる

オルフェは意図せず後ろを向いたことで、ユリディスを失うことになります。
オルフェは二人の決別を喜びます。

ジュピテールはプリュトンとの「ユリディスの取り合い」をやめて、ユリディスを「バッカスの巫女」に変えます。
そして全員が愉快に歌う中で、物語は終わります。