邦題売られた花嫁
初演1866年5月30日 プラハ国民劇場
台本カレル・サビナ(チェコ語)
演奏時間2時間15分

『売られた花嫁(Prodaná nevěsta)』は、ベドルジハ・スメタナ(Bedřich Smetana/1824年-1884年)が作曲したオペラで、彼にとって2作目のオペラです。
スメタナは8作のオペラを作曲しましたが、このオペラはその中で唯一上演される機会のあるオペラです。

またチェコ語のオペラですが、ドイツ語で上演されることもあります。

 『売られた花嫁』は、『ルサルカ』(ドヴォルザーク)『イェヌーファ』『利口な女狐の物語』(ヤナーチェク)と並んで、チェコを代表するオペラとして知られています。

このオペラは初演から大成功を収め、すぐに人気作品となりました。
そして、スメタナの生前中に何度も上演され、1882年には百回記念公演も開かれました。

現在の版は幾度もの改訂を経たもので、1870年に決定稿が初演されています。

ここではスメタナのオペラ『売られた花嫁』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
マジェンカ(ソプラノ)農家の娘
イェーニク(テノール)マジェンカの恋人
ヴァシェク(テノール)大地主ミーハの息子
ケツァル (バス)結婚仲介人
クルシナ (バリトン)マジェンカの父親
ルドミラ (ソプラノ)マジェンカの母親
ミーハ(バス)ヴァシェクとイェーニクの父親。大地主
ハータ(メゾソプラノ)ヴァシェクの母親

『売られた花嫁』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
マジェンカには恋人イェーニクがいますが、両親の勧めで「大地主ミーハ家のボンボン息子(次男)」と無理やり結婚させられようとしています。

またミーハ家には二人の息子がいるのですが、長男は放浪の旅に出ており行方不明です。
実はその息子こそがイェーニクです。

 イェーニクは素性を明かしていません。

イェーニクは結婚仲介人と「マジェンカはミーハ家の息子以外とは結婚しない。」という契約を交わします。
それはボンボン息子だけではなく、自分にも当てはまる契約でした。

最後にイェーニクは身分を明かし、計画通りマジェンカと結婚することに成功し、オペラが終わります。

第1幕:『売られた花嫁』のあらすじ

マジェンカが「見知らぬボンボン」と結婚させられようとしている

ボヘミアのある農村の広場
教会の聖別式祭の日

村人たちが賑やかに踊っています。
そんな中、マジェンカ(農夫クルシナの娘)だけが浮かない顔をしています。
その理由は「両親がヴァシェク(大地主ミーハの息子)と無理やり結婚させようとしている」からでした。

マジェンカはイェーニク(マジェンカの恋人)に「あなたは自分の家も捨てて、恋人も捨てるの!?」と、その悲しみを訴えます。(Kdybych se co takového)
二人はお互いに愛を誓いあいます。

"Kdybych se co takového"

 イェーニクは幼いころに義理の母(父の再婚相手)にいじめられて、家出をしています。
彼は、恋人マジェンカに詳しい素性を明かしていません。

マジェンカが両親と結婚仲介人に異議を唱える

入れ違いで、マジェンカの両親(クルシナとルドミラ)ケツァル(結婚仲介人)が現れます。

ケツァルは
「あの家には前妻の子供がいたんだけど、放浪しているんだよね。」
「2番目の奥さんの子供(ヴァシェク)とあなたの娘(マジェンカ)を結婚させましょう。」

「彼は金持ちで良い男なんですよ。」
と両親に話します。

両親は「あなたの言葉を信じますよ。」と返します。

そこにマジェンカが現れ、「私には他に恋人がいるのよ!」と結婚に断固反対します。
ケツァルは「両親がもうサインしてるよ!」と誓約書をかざします。

マジェンカは「そんなの知らないし、言うことなんか聞かないわ!」と怒って去っていきます。

結婚仲介人の作戦変更

ケツァル(結婚仲介人)は作戦を変更し、「まずはイェーニク(マジェンカの恋人)を説得しよう。」と考えます。
そして、彼を訪ねに居酒屋へ向かいます。

居酒屋の前で村人たちが陽気にポルカを踊る中で第1幕が終わります。

第2幕:『売られた花嫁』のあらすじ

ヴァシェクがマジェンカとは知らず、彼女に恋してしまう

居酒屋
居酒屋で、イェーニクが陽気にビールを称えて歌っています。

入れ違いで、ヴァシェクが「か、か、母さんに結婚するように言われたんだ。」とマジェンカに会いに現れます。

 ヴァシェクはどもっており、流暢に話すことができません。

そこにマジェンカも現れます。
マジェンカは"ヴァシェクが自分のことを知らない"のをいいことに「マジェンカは悪い奴だから結婚はやめときなさい!」とヴァシェクに忠告します。

ヴァシェクは忠告を受け入れますが、その美しさからマジェンカに恋をしてしまいます。

 ヴァシェクは「恋した相手がマジェンカ」だとは知りません。

イェーニクが"条件付き"で「恋人マジェンカの結婚」を了承する

二人と入れ違いに、ケツァル(結婚仲介人)とイェーニクが現れます。

ケツァルは「いい娘を紹介してお金もあげるから、マジェンカを諦めてよ。」とイェーニクに話を持ち掛けます。
イェーニクは「マジェンカはミーハ家の息子以外とは結婚しない。」という条件でそれを了承します。

 実はイェーニクこそが、放浪しているミーハ家の長男です。

何も知らないケツァルが喜んで退場する中、イェーニクが「僕が愛するマジェンカを売ったと、みんな信じるかな。」「僕には恋が一番価値のあるものなんだ。」と歌います。(Až uzříš, komus koupil nevěstu)

"Až uzříš, komus koupil nevěstu"

村人たちが「自分の恋人を売ったのか!?恥知らず!」と非難する中で、第2幕が終わります。

第3幕:『売られた花嫁』のあらすじ

ヴァシェクがサーカス団の女性に恋をし、熊役の代役候補となる

第1幕と同じ広場
ヴァシェクが、居酒屋であった見知らぬ女性(マジェンカのこと)を想って嘆いています。

やがて広場に旅のサーカス一座が現れると、彼らは陽気に踊りだします。
ヴァシェクはその中の一人エスメラルダに一目惚れをします。

そこに「熊役の団員が酔いつぶれて、今夜の舞台に立てなくなった。」という知らせが入ります。
エスメラルダは、ヴァシェクを熊役として一座に加えようとします。

ヴァシェクが「マジェンカと結婚したい」と言い出す

ヴァシェクが熊の踊りを練習しているところに、マジェンカの両親とケツァルが現れます。
彼らはヴァシェクをマジェンカのところへ連れて行こうとしますが、ヴァシェクは「どこかの可愛い娘が、結婚したらいけないって教えてくれたんだ!」と結婚する気を見せません。

そこにマジェンカが現れます。
彼女は「恋人イェーニクが花嫁を売る契約書にサインした」ことに怒っています。

一方、ヴァシェクは「恋する見知らぬ娘=マジェンカ」だとわかり喜びます。
そして先ほどのエメラルドのことはすっかり忘れ、結婚したいと言い出します。

マジェンカは"恋人の弁解"を聞こうとしない

一人残ったマジェンカは「彼が署名したなんて信じられない。恋のバラは散ってしまったの。」と悲しみを歌い上げます。(Och jaký žal!)

"Och jaký žal!"

そこに何も知らないイェーニクが現れます。
イェーニクは事情を説明しようとしますが、マジェンカは聞く耳を持ちません。

マジェンカは当てつけに「ヴァシェクと結婚するわ!」と言い放ちます。

イェーニクが「マジェンカとの結婚」を宣言する

そこにミーハ夫妻が現れ「イェーニク=放浪している息子」を発見します。
イェーニクは「父さん、ようやく僕は国に帰って来たんだよ。」「契約書通り、マジェンカと結婚するよ。」と語ります。

そこで初めてケツァルは「マジェンカはミーハ家の息子以外とは結婚しない。」という条件がイェーニクの策略だったと気づきます。
マジェンカは「私はあなたのものよ!」と喜び、ケツァルは「なんてずる賢い人間だ!」と逃げていきます。

村人たちが結婚を祝福する中、熊の格好をしたヴァシェクが現れ皆の笑いを誘います。
ミーハ(イェーニクの父)も放浪していた息子を許し、皆が「めでたしめでたし!結婚の準備をしよう!」と歌う中でオペラが終わります。

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