項目 | データ |
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作曲年 | 1808年 |
初演 | 1808年12月22日 |
献呈 | バイエルン国王マクシミリアン1世 |
演奏時間 | 20分程度 |
ベートーヴェンの「合唱幻想曲」は1808年に作曲された作品です。
ベートーヴェンは20代後半から難聴に悩まされ、その苦悩から1802年には『ハイリゲンシュタットの遺書』を残し自殺も考えます。
しかし交響曲第3番(1804年)頃から生きる力を取り戻し、その後10年間にわたり次々と傑作を生みだします。(傑作の森)
この作品はベートーヴェンが難聴の苦悩を打ち破った後の、彼の創作意欲が最も高かった時期の作品の一つです。
1808年:交響曲第5番『運命』
1808年:交響曲第6番『田園』
1809年:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』
1810年:エリーゼのために
1810年:ピアノソナタ第26番『告別』
などが挙げられます。
演奏される機会は多くありませんが、近年では小澤征爾さんが2015年、2016年と指揮したことで日本のファンに記憶に新しい作品です。
・2016年4月ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン・フィル定期公演で7年ぶりの指揮)
ここでは、ベートーヴェン「合唱幻想曲」の解説と名盤を紹介したいと思います。
ベートーヴェン「合唱幻想曲」の演奏
[00:00]:ピアノソロで始まる[03:28]:オーケストラが加わる
[04:45]:主題が演奏される
[14:00]:声楽が加わる
[14:53]:合唱が加わる
ピアノ:ギュンター・コーツ(Günter Kootz/1929年-)
指揮:フランツ・コンヴィチュニー(Franz Konwitschny/1901年-1962年)
「運命」「田園」と同時期に「第九」の原型が生まれた
「合唱幻想曲」は、「交響曲第5番(運命)」「交響曲第6番(田園)」と同じ時期に作曲されました。
「合唱幻想曲」は、「第九の原型」ではないかとも言われています。
それは後半にソリストが登場し、合唱が加わるところです。
似ているのは形式だけではなく、音楽も第九の「歓喜の歌」を思い出すメロディーが流れます。
「第九」(1824年)は声楽と大規模な合唱を用い、斬新な音楽として当時の聴衆を驚かせました。
その15年以上前から、ベートーヴェンはアイデアを持っていたということになります。
初演はさんざんだった
初演は1808年12月22日にアン・デア・ウィーン劇場でおこなわれました。
同時に「運命」「田園」の初演もおこなわれています。
このときピアノ独奏部分は完成しておらず、ベートーヴェンはピアノを即興で自らで演奏したそうです。
またリハーサルも十分に行われなかったと言われています。
音楽が途中で崩壊してしまい、やり直して演奏したというエピソードが残っています。
初演の結果は、もちろん失敗だったようです。
歌詞も「第九」を彷彿させる!?
声楽部分の歌詞は、曲が完成した後に付けられました。
オーストリアの詩人クリストフ・クフナー(Christoph Kuffner/1780年-1846年) のものではないかという説がありますが、その詩が彼の作品の中になく、真偽は不明のようです。
ベートーヴェンが意識したかどうかはわかりませんが、「合唱幻想曲」の最後の「愛と神」が出てくる歌詞は第九を彷彿させます。
Nehmt denn hin, ihr schönen Seelen,
froh die Gaben schöner Kunst.
Wenn sich Lieb und Kraft vermählen,
lohnt dem Menschen Göttergunst.
あなたの美しい魂を受け止めよう
喜ばしい贈り物、そう美しい芸術を
愛と力が結びつくとき
人々は神の恩恵を受ける
ベートーヴェン「合唱幻想曲」の名盤
小澤征爾、サイトウ・キネン、アルゲリッチこちらは2015年,2016年のセイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)のブルーレイ映像です。
メインにはベートーヴェンの「交響曲第2番」「交響曲第7番」が収録されており、特典として「合唱幻想曲」が入っています。
「合唱幻想曲」は、この中の「マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート」で演奏されました。
アルゲリッチは「合唱幻想曲」をレパートリーとして持っておらず、このコンサートのために練習したそうです。
完璧な演奏とは言えないかもしれませんが、二人の生ける伝説の熱量のこもった「合唱幻想曲」は必聴です。
サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:小澤征爾
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
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