目次
項目 | データ |
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初演 | 1893年2月9日 ミラノ・スカラ座 |
原作 | ウィリアム・シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』 |
台本 | アッリーゴ・ボーイト |
演奏時間 | 2時間 |
『ファルスタッフ(Falstaff)』は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)によって作曲されたオペラで、彼にとって最後のオペラです。
上演される唯一のオペラ・ブッファ
この最後のオペラは、彼にとって2作目のオペラ・ブッファです。
1作目のオペラ・ブッファは最初期に書かれたもので、現在上演される機会はありません。
そのため、『ファルスタッフ』は彼のオペラで唯一上演される喜劇となっています。
原作はシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』
原作はウィリアム・シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』を使用しています。
同じ原作を使用したものとしては、オットー・ニコライの代表的オペラ『ウィンザーの陽気な女房たち』(1849年)があります。
このニコライ作曲のオペラの40年以上後に、『ファルスタッフ』は作曲されました。
ここではヴェルディのオペラ『ファルスタッフ』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
ファルスタッフ(テノール):太った騎士
フォード(バリトン):裕福な男性
アリーチェ(ソプラノ):その妻
ナンネッタ(ソプラノ):その娘
メグ・ペイジ(メゾソプラノ)
クィックリー夫人(メゾソプラノ)
フェントン(テノール):ナンネッタの恋人
ドクター・カイウス(テノール):ナンネッタへの求婚者
バルドルフォ(テノール):ファルスタッフの従者
ピストラ(バス):ファルスタッフの従者
『ファルスタッフ』の簡単なあらすじ
時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
太った騎士ファルスタッフは、2人の女性に"同じ文章のラブレター"を送ります。
その失礼な態度に女性たちは怒り、「ファルスタッフへの復讐計画」をたてます。
そして「ファルスタッフの誘いに乗るふり」をすると、ファルスタッフは見事に引っ掛かります。
懲らしめられたファルスタッフが「すべてこの世は冗談」と歌うのに皆も続いて、オペラが終わります。
第1幕:『ファルスタッフ』のあらすじ
ファルスタッフが2人の女性(アリーチェとメグ)に"同じ文章のラブレター"を送り付ける
ウィンザーにある居酒屋ガーター亭
ファルスタッフが2通の手紙を書き終えたところに、医者カイウスが叫びながら現れます。
カイウスは
「昨日、お前はおれの召使いを殴ったな!」「馬も乗りつぶしただろ」
と、ファルスタッフと2人の従者(バルドルフォ・ピストラ)の悪行をなじっています。
しかし相手にされず、従者たちにからかわれて追い返されます。
居酒屋の亭主がファルスタッフに勘定を持ってきます。
お金のないファルスタッフは、ごまかすために従者たちをののしります。
続いてファルスタッフはアリーチェ(フォードの妻)とメグ(ページの妻)に対し愛の歌を歌います。
そして従者たちにそれぞれ恋文を届けさせようとするが、従者は「名誉にかかわる」と断ります。
仕方がないので小姓に頼み、従者を追い出します。
アリーチェとメグたちは「ファルスタッフを懲らしめよう」と計画する
フォード家の庭
アリーチェとメグは、ファルスタッフからの手紙が全く同じ文章であることに呆れています。
そこにクィックリー夫人とナンネッタも話に加わります。
皆は「ファルスタッフに仕返しをして、笑いものにしよう。」と約束し、退場します。
フォードが「ファルスタッフが自分の妻(アリーチェ)を狙っている」と知り、復讐を計画する
続いてファルスタッフに追い出された従者2人とフェントン(ナンネッタの恋人)が、フォードに連れられて現れる。
従者がファルスタッフの文句を言い、「ファルスタッフがアリーチェを狙っている」と告げ口します。
フォードは怒ります。
戻って来た女性たちはファルスタッフへの復讐を計画します。
恋人同士のフェントンとナンネッタは、その隙を見て愛を語り合います。
一方男性たちも、女性たちとは別に復讐を計画します。
両者が入り混じった重唱が歌われます。
第2幕:『ファルスタッフ』のあらすじ
ファルスタッフが「女性たちの計画」にはまっていく
ガーター亭
ファルスタッフが居酒屋で飲んでいます。
そこに従者2人が戻ってきて、後悔しているふりをして彼に謝罪します。
そしてクィックリー夫人をアリーチェの使者として紹介します。
クィックリー夫人は
「アリーチェはファルスタッフに心が乱れていて、手紙にも感謝しています。」
「彼女の夫フォードは2時から3時までは家を留守にしていますよ。」
とファルスタッフに伝えます。
ファルスタッフは有頂天になり、「アリーチェはおれのものだ!」と高らかに歌います。
"女性たちの計画"を知らないフォードが、妻に嫉妬する
そこにフォードがフォンターナという偽名を名乗って登場します。
フォードは、
「アリーチェに恋をしているが、彼女は相手にしてくれない。」
「おれの代わりにアリーチェを口説いてくれないか。」
とファルスタッフに相談します。
ファルスタッフは承諾し、
「実はもう逢引の準備は整っている。」
と返します。
それを聞いたフォードは驚き、「夢か現実か」(È sogno? o realtà?)と歌い、妻を疑い嫉妬します。
ファルスタッフは正装し逢引に出掛け、フォードもそれに付いて行きます。
女性たちの計画が始まる
フォード家の一室
クィックリー夫人が現れ、アリーチェとメグに「ファルスタッフが来る」ことを伝えます。
彼女たちは早速準備に取り掛かります。
アリーチェがリュートを演奏しているところに、ファルスタッフが登場します。
そして彼女に愛を語り、「私は昔は痩せていた。」と歌います。(Quand’ero paggio del Duca di Norfolk)
「Quand’ero paggio del Duca di Norfolk」
しかしクィックリー夫人が「メグが来る」と伝えに来るので、ファルスタッフは急いで隠れます。
予定通りメグが来ると、彼女は
「フォードが怒り狂ってこっちに向かっているわ!」
と告げます。
今度はアリーチェも驚きます。
フォードが妻の浮気を疑い、戻ってくる
フォード一行が到着し、部屋を捜索しだします。
隠れる場所に困ったファルスタッフは、洗濯籠に隠れます。
この騒ぎの隙に、ナンネッタとフェントンは再び愛を交わします。
「男女が戯れている音が聞こえる」ので、男たちがついたてを倒すと、それは「ファルスタッフとアリーチェ」ではなく「ナンネッタとフェントン」でした。
ファルスタッフは川に投げ捨てられる
ナンネッタとフェントンの交際を認めていないフォードはますます怒り、さらに捜索を続けます。
その間にアリーチェは召使いを呼び、ファルスタッフの入った洗濯籠をテムズ川に投げ捨てます。
第3幕:『ファルスタッフ』のあらすじ
ファルスタッフが再び騙される
ガーター亭の外
ずぶ濡れになったファルスタッフは、お酒を飲みながら怒りをぶちまけています。(Ehi! Taverniere)
「Ehi! Taverniere」
そこにクィックリー夫人が再び登場し、「アリーチェはあなたを愛していて、後悔しています。」と告げ、手紙を渡します。
ファルスタッフは再び引っかかり、「真夜中にウィンザー公園の樫木の下で逢引する。」ことになります。
アリーチェたちも隠れて様子を見ており、計画の準備にとりかかります。
事情を知ったフォードも今度は計画に加わりますが、そのついでに「ナンネッタとカイウスを結婚させよう」としています。
クィックリー夫人はその企みに気付き、「そうはさせない!」と急いで出ていきます。
フェントンも変装させられ、準備が整う
深夜のウインザー公園、中央にハーンの樫の木
フェントンがネンネッタへの愛を情熱的に歌い上げています。(Dal labbro il canto estasiato vola)
そこに妖精姿のナンネッタとアリーチェが現れ、フェントンに修道士の格好をさせます。
フェントンは事情が分からないまま、されるがままに変装させられます。
そしてフォードの裏をかく準備が整います。
「Dal labbro il canto estasiato vola」
皆でファルスタッフを懲らしめる
ファルスタッフが猟師姿で現れ、真夜中の12時の鐘がなります。
アリーチェも登場し逢引を始めますが、すぐにメグが「助けて、悪魔がくる!」と割って入ってきます。
妖精の女王に変装したナンネッタが歌を歌いあげます。(Sul fil d’un soffio etesio)
様々な格好に変装した皆は、ファルスタッフを懲らしめます。
変装が解かれ正体が明らかになったところで、ファルスタッフは皆に騙されたことに気付きます。
「Sul fil d’un soffio etesio」
フォードの計画は失敗し、ナンネッタとフェントンは結ばれる
最後にフォードが自分の企みを実行します。
フォードは、"妖精の女王とカイウスの結婚"を発表します。
しかし、妖精が仮面を外すと、それはナンネッタではなくバルドルフォでした。
一方、アリーチェは"緑色の妖精と修道士の男の結婚"を提案します。
仮面をとると、それはナンネッタとフェントンでした。
フォードもついに二人の結婚を認めます。
ファルスタッフの「すべてこの世は冗談」という言葉に皆も続いてオペラが終わります。
ヴェルディ『ファルスタッフ』の映像
輸入盤2009年、イギリスのグラインドボーン音楽祭でのライブ映像です。
第二次世界大戦直後を舞台にしたリチャード・ジョーンズによる演出は、色彩感豊かな舞台に仕上がっています。
ファルスタッフ役のクリストファー・パーヴィズが、滑稽なファルスタッフ像を見事に表現しています。
小劇場での上演ということもあり、音楽だけでなく演劇性もとても高い公演です。
端役のキャストも、見応え抜群です。
役名等 | 演奏 |
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ファルスタッフ | クリストファー・パーヴィズ |
アリーチェ | ディナ・クズネツォワ |
フォード | タシス・クリストヤニス |
メグ・ペイジ | ジェニファー・ホロウェイ |
クイックリー夫人 | マリー=ニコル・ルミュー |
ナンネッタ | アドリアーナ・クチェロヴァー |
フェントン | ビュレント・ベズデュズ |
医師カイウス | ピーター・ホア |
バルドルフォ | アラスデア・エリオット |
ピストーラ | パオロ・バッターリア |
管弦楽 | ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 |
指揮 | ヴラディーミル・ユロフスキ |
演出 | リチャード・ジョーンズ |
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