目次
題名 | シチリア島の夕べの祈り |
---|---|
初演 | 1855年6月13日 パリ・オペラ座 |
台本(仏語) | ウジェーヌ・スクリーブ、シャルル・デュヴェリエ |
演奏時間 | 3時間15分 |
『シチリア島の夕べの祈り(Les vêpres siciliennes/I Vespri Siciliani)』は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)の19作目のオペラで、彼の代表作『椿姫』の次の作品です。
日本語タイトルは統一されておらず『シチリアの晩鐘』『シチリアの晩祷』と呼ばれることもあります。
このオペラは、「1282年にシチリア島で起こったフランス人虐殺事件(シチリアの晩祷)」が題材となっています。
実は台本作家のスクリーブは、ドニゼッティにこの事件を題材としたオペラ『アルバ公爵』の台本を約15年前に提供していました。(オペラは未完、後に補筆により完成)
ヴェルディは「使い回し」という事実を知らずにこのオペラを書いたそうです。
また、その他にもロッシーニ『オリー伯爵』、ドニゼッティ『愛の妙薬』『ラ・ファヴォリート』 の台本作家としても知られています。
ヴェルディは、このオペラ初演の3年前にパリ・オペラ座と契約を結びました。
そして第1回パリ万国博覧会のために、グランド・オペラの作曲を依頼されました。
3時間を超えるオペラの作曲にヴェルディは苦労したそうですが、初演は大成功を収めたそうです。
ここではヴェルディのオペラ『シチリア島の夕べの祈り』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
人物 | 詳細 |
---|---|
モンフォルテ(バリトン) | 総督、アリーゴの父 |
アリーゴ(テノール) | シチリアの青年、エレーナと相思相愛 |
エレーナ(ソプラノ) | 前シチリア王の娘 |
プロチダ(バス) | シチリア人の医師、フランス人への復讐を企てる |
ベテューヌ卿(Bs),ヴォドモン伯爵(Bs),ニネッタ(Ms),ダニエーリ(T)
テバルド(T),ロベルト(Br),マンフレード(T)
※人物名はイタリア語版での表記
『シチリア島の夕べの祈り』の簡単なあらすじ
時間のない方のための「簡単なあらすじ」
主な登場人物4人のうち「エレーナ、アリーゴ、プロチダの3人」はシチリア側です。
総督モンフォルテだけがフランス側です。
【第1幕】
総督モンフォルテがシチリアを支配し、シチリア人たちは不満を持っています。
【第2幕】
帰国したプロチダ(シチリアの医師)がシチリア人を先導し、「フランス人へ復讐の機会」を狙っています。
一方、エレーナ(前シチリア王の娘)とアリーゴ(シチリアの青年)は相思相愛の仲です。
【第3幕】
そんな中、アリーゴは「自分の父親がモンフォルテ」だと初めて知り、葛藤します。
プロチダが「モンフォルテ殺害計画」を企てますが、アリーゴが止めに入り失敗に終わります。
反逆者たちは捕えられます。
【第4幕】
アリーゴの懇願で、反逆者の処刑は免れます。
そして「アリーゴとエレーナの結婚」が認められます。
【第5幕】
プロチダが「婚礼の鐘」を合図に、「フランス人の虐殺」を企てます。
無情にも鐘がなり、シチリア人たちがフランス人に襲い掛かったところでオペラが終わります。
第1幕:『シチリア島の夕べの祈り』あらすじ
シチリアはフランスによって占領されている
パレルモの広場 1282年3月30日(復活祭の月曜日)
フランスの兵士たちが、酒を飲んで祖国の想いを歌っています。
その様子に、シチリア人たちは不満を覚えます。
そこに人質となったエレーナ(前シチリア王の娘)が、喪服を着て現れます。
シチリア人とフランス兵が一触即発となる
フランス兵はエレーナに歌を強要し、エレーナは静かに受け入れ歌いだします。(In alto mare e battuto dai venti)
シチリア人たちはエレーナの歌をきっかけに復讐に燃え、フランス兵たちに襲い掛かろうとします。
「In alto mare e battuto dai venti」
しかし、そこにモンフォルテ(現シチリアの総督、皆に恐れられている)が現れます。
人々は恐れのあまり逃げ去っていきます。
モンフォルテ(総督)の誘いを、アリーゴが拒絶する
続いてアリーゴ(シチリア人の青年)が登場します。
アリーゴは「反逆罪で捕らわれていたが、無罪となった」ことを旧知の仲のエレーナに告げます。
エレーナが去ると、モンフォルテは「自分の部下にならないか?」とアリーゴを誘いますが、アリーゴは拒絶します。
怒ったモンフォルテは「エレーナには近づかないよう」命じますが、アリーゴはそれも拒絶します。
そしてアリーゴは、愛する人のためなら「死んでもかまわない」とエレーナの宮殿へと向かっていきます。
第2幕:『シチリア島の夕べの祈り』あらすじ
プロチダが帰国し、フランス人への復讐心を燃やす
プロチダ(シチリア人の医師、亡命をしていた)が祖国に帰って、祖国の自由を願っています。(O tu Palermo)
そこにエレーナとアリーゴが偶然通りかかり、3人は再会を喜びます。
プロチダは2人に「今こそフランスへの復讐のときだ」と語り、去っていきます。
「O tu Palermo」
アリーゴが「モンフォルテ(総督)の舞踏会」に無理やり連れていかれる
2人きりになると、アリーゴはエレーナに愛を告白します。
エレーナは「兄の仇をうってくれたら結婚します。」と約束します。
そこにフランスの将校が「舞踏会の招待状」をアリーゴに持ってきます。
アリーゴは断りますが、無理やり連れていかれます。
戻ってきたプロチダはその経緯に怒り、復讐を計画します。
フランス兵たちがシチリアの娘たちをさらい、シチリア人たちは復讐を決意する
プロチダは「12組のカップル」にタランテラ(イタリア・ナポリの舞曲)を踊らせます。
やがてフランス兵たちも集まってきます。
プロチダは「フランスの仲間」であるかのように振る舞って、フランス兵たちに娘たちを誘惑するようそそのかします。
するとフランス兵たちは、娘たちを連れ去ってしまいます。
シチリア人たちは予想通り怒り狂い、皆は復讐を心に決めます。
第3幕:『シチリア島の夕べの祈り』あらすじ
モンフォルテ(総督)は「アリーゴの父親」だった
モンフォルテ宮殿の書斎
モンフォルテは、かつてシチリアの女性との間に子供をもうけていました。
そしてその子供こそがアリーゴでした。
アリーゴが、モンフォルテのもとに連れてこられます。
アリーゴは「自分の父親がモンフォルテ」だと知り、衝撃を受けます。
アリーゴは「父への気持ち」が膨らむ一方で、「エレーナとの約束(仇をうつ)」に当惑します。
そして、涙ながらその場から走り去っていきます。
「モンフォルテ暗殺計画」が企てられている
モンフォルテ宮殿の大広間
仮面舞踏会が開かれており、そこにエレーナとプロチダも紛れ込んでいます。
二人は「総督の暗殺計画」をアリーゴに打ち明けます。
アリーゴは、モンフォルテに逃げるよう忠告しますが聞き入れられません。
アリーゴがモンフォルテを助け、暗殺者は逮捕される
そのときエレーナとプロチダが剣を抜き、モンフォルテを襲います。
アリーゴは思わずモンフォルテをかばい、暗殺者たちは逮捕されてしまいます。
シチリア人たちは「アリーゴの裏切り」に激怒し、モンフォルテは「息子の変貌」に喜びます。
第4幕:『シチリア島の夕べの祈り』あらすじ
エレーナは「アリーゴの父がモンフォルテ」だと知り、アリーゴを許す
砦の中庭
アリーゴが自分の数奇な運命に苦しんでいます。(Giorno di pianto)
「Giorno di pianto」
牢獄から出てきたエレーナに、アリーゴは「自分の父親がモンフォルテ」であることを告げます。
裏切りに怒っていたエレーナでしたが、事情を知りそれに同情します。(Arrigo! ah parli a un core)
「Arrigo! ah parli a un core」
エレーナはアリーゴを許し、二人は再び愛を確認し合います。
そこに鎖につながれたプロチダが現れ「反乱の救助船が来ている」と、エレーナにそっと告げます。
モンフォルテが「アリーゴとエレーナの結婚」を認める
続いてモンフォルテが現れ「反逆者たちを処刑」するよう命じます。
アリーゴが許しを請うと、モンフォルテは「私を父と呼べば許そう。」と答えます。
たまらずアリーゴは、それを受け入れます。
処刑は中止され、さらに「アリーゴとエレーナの結婚」が認められます。
その傍らで、プロチダは「結婚を復讐に利用しよう」と企みます。
第5幕:『シチリア島の夕べの祈り』あらすじ
エレーナは「虐殺を回避」するために、結婚の中止を懇願する
モンフォルテ宮殿の庭
「アリーゴとエレーナの結婚」が祝われており、エレーナがそれに応えています。(Mercé, dilette amiche)
プロチダがそっとエレーナに近づき「婚礼の晩鐘をきっかけに、フランス人を虐殺する」ことを告げます。
「Mercé, dilette amiche」
エレーナは虐殺を回避するために、アリーゴに「結婚の中止」を告げます。
事情を知らないアリーゴは、裏切りに激高します。
無情にも婚礼の鐘が鳴り、シチリア人たちの暴動でオペラが終わる
そのとき、モンフォルテが登場し二人を強引に結び合わせます。
プロチダの号令で「晩鐘(夕方に鳴る教会の鐘の音)」が一斉に鳴りだし、シチリア人たちがフランス人に襲い掛かったところでオペラが終わります。
その他の曲目一覧(目次)
その他の作品・あらすじ・歌詞対訳などは下記リンクをクリックしてください。