目次
項目 | データ |
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初演 | 1853年1月19日 アポロ劇場(ローマ) |
原作 | スペインの劇作家グティエレスの『エル・トロバドール』 |
台本 | サルヴァトーレ・カンマラーノ、レオーネ・エマヌエーレ・バルダーレ |
演奏時間 | 2時間10分 |
『イル・トロヴァトーレ(Il Trovatore)』は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)によって作曲されたオペラで、ヴェルディ中期の傑作の一つです。
このオペラは、劇場から依頼されたものではなく、自らで題材を選択して作曲したオペラでした。
初演はヴェルディ自らで指揮をふり、大成功をおさめたそうです。
また、ヴェルディはワーグナーと同年齢で、そのことから二人は比較されることがしばしばあります。
ここではヴェルディのオペラ『トロヴァトーレ』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
ルーナ伯爵(バリトン):アラゴンの貴族
レオノーラ(ソプラノ):アラゴン王妃の女官
アズチェーナ(メゾソプラノ):ジプシーの老婆
マンリーコ(テノール):騎士、吟遊詩人。アズチェーナの息子だが、本当はルーナ伯爵の弟。レオノーラの恋人
フェランド(バス):ルーナ伯爵の家臣
イネス(ソプラノ、メゾソプラノ):レオノーラの侍女
ルイス(テノール):マンリーコの部下
『トロヴァトーレ』の簡単なあらすじ
時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
ルーナ伯爵は、マンリーコと敵対相手にあります。
そしてマンリーコと恋敵であることも判明し、伯爵は激高します。
伯爵はマンリーコを捕え、処刑します。
しかし処刑した後に、マンリーコの正体は「伯爵が探し続けていた実の弟」とだったことが判明します。
伯爵家を恨み続けていたアズチェーナは復讐を果たし、伯爵の絶望の中でオペラは終わります。
第1幕:『トロヴァトーレ』のあらすじ
ルーナ伯爵は、死んだとされる弟を未だに探し続けている
アリアフェリア城の前
伯爵家にまつわる邪悪な話
衛兵たちがうとうとしながら、ルーナ伯爵の帰りを待っています。
家臣フェルランドは彼らに
「先代のルーナ伯爵には、二人の子供がいた。」
「ある日、ジプシーの老婆が弟を占うと、弟は病で倒れた。」
「その魔女は迫害され、火あぶりの刑となった。」
「しかし、焼け跡から出て来たのは子供の骨だった。」
と伯爵家にまつわる邪悪な話をします。
そして
「弟は生きているかもしれないと、ルーナ伯爵は弟を探し続けている。」
と話しています。
真夜中を告げる鐘が突然鳴り、衛兵たちは「ああ、地獄の魔女の呪いだ!」と叫び去っていきます。
レオノーラがマンリーコ(吟遊詩人)への愛を歌う
夜、宮殿の庭
レオノーラが侍女イネスに、
「あの人に会えずに一晩が過ぎてしまった。」
「御前試合で勝った無名のあの戦士には、内戦が起こってから会えていない。」
「でも・・・」
と語ります。
イネスが話の続きを尋ねると、
レオノーラは、
「ある静かな夜に吟遊詩人が私の名前を呼んで歌っていた。」
「急いでバルコニーへ向かうと、それは彼だった。」
と話します。(Tacea la notte placida)
「Tacea la notte placida」
そして
「彼のために生きられないならば、私は死ぬだろう!」
と語り、部屋に入っていきます。
伯爵も、レオノーラに恋している
ルーナ伯爵が登場します。
彼は、レオノーラに恋をしています。
その時、吟遊詩人の歌声が聞こえてきます。
伯爵は恋敵の吟遊詩人へ嫉妬します。
伯爵の恋敵の正体は、敵対しているマンリーコだった
そこへレオノーラが現れ、吟遊詩人と間違って伯爵に抱きつきます。
レオノーラはマンリーコ(吟遊詩人)に「あなただと思って抱きついてしまった。」と取り乱します。
伯爵は怒り、吟遊詩人に「名前はなんだ?」と問いかけます。
吟遊詩人は、「マンリーコだ。」と答えます。
伯爵は「恋敵は、敵対関係のマンリーコだった」と知り、さらに激情します。
二人は剣を交え決闘し、レオノーラは崩れ落ちます。
第2幕:『トロヴァトーレ』のあらすじ
アズチェーナが伯爵家への恨みを語り、その復讐をマンリーコに懇願する
ビスカリアの山の麓の古い家
ジプシーたちが仕事に励んでいます。
そんな中、老婆アズチェーナが、「自分の母親が火あぶりの刑になった」という恐ろしい記憶を歌います。(Stride la vampa)
「Stride la vampa」
マンリーコとアズチェーナ
マンリーコはアズチェーナに、その出来事のことをさらに詳しく尋ねます。
実際は伯爵の弟で、後にそのことが明らかになります。
するとアズチェーナは、
「母親の復讐をするために、私は伯爵の息子をさらい、火の中に投げ入れた。」
「しかし、焼けて出て来たのは私の息子だった!」
と語ります。
マンリーコは「それなら私は誰の子なんだ!?」と尋ねますが、
アズチェーナは秘密が明らかになるのを恐れ、「お前は私の子だ。」と答えます。
マンリーコはルーナ伯爵と戦ったときに「刺してはいけないという声が、天から聞こえた。」ことを思い出します。
アズチェーナは「かたきをとってくれ。」と懇願します。
マンリーコがレオノーラのもとへ出発する
レオノーラの知らせ
そこに伝令がマンリーコ宛ての手紙を持って現れます。
手紙の内容は、
「マンリーコの死の誤報を信じて、レオノーラが修道院に入る。」
というものでした。
マンリーコはレオノーラを失う辛さで我を失います。
そしてアズチェーナの制止を振り切り、別れを告げて出発します。
伯爵が「レオノーラの誘拐」を計画する
夜、カステロール近くの修道院の中庭
伯爵と部下たちが、レオノーラを誘拐するために修道院に来ています。
そこで伯爵は、レオノーラへの恋心を歌います。(Il balen del suo sorriso)
そこにレオノーラが修道女たちと登場します。
レオノーラは、マンリーコを失う悲しみで涙を流しています。
「Il balen del suo sorriso」
マンリーコが誘拐を阻止し、レオノーラを奪還する
そこに伯爵が突然現れ、レオノーラを誘拐しようとします。
しかし、その瞬間マンリーコが登場し、止めに入ります。
そして伯爵を追い返し、レオノーラを連れ去ります。
レオノーラはマンリーコが生きており、自分のそばにいることを喜びます。
第3幕:『トロヴァトーレ』のあらすじ
伯爵がアズチェーナを捕え、マンリーコをおびき出す
ルーナ伯爵の野営地
兵士たちが出陣を称える歌を歌っています。
そんな中、家臣フェランドが伯爵に、「ジプシーの老婆を捕えた。」と報告します。
伯爵はアズチェーナに尋問します。
そして、アズチェーナは「伯爵が昔誘拐した子供の兄」であることを知り
伯爵は、「アズチェーナが弟を誘拐した犯人」であることを知ります。
縛りあげられたアズチェーナは、マンリーコの名を叫び助けを求めます。
伯爵は火あぶりの台を作り、アズチェーナを利用してマンリーコをおびき出そうとします。
マンリーコが、アズチェーナを助けに向かう
マンリーコとレオノーラ
辺りでは戦争が激しくなる中、マンリーコはレオノーラに戦いでの勝利を誓います。
そして二人は婚礼のために礼拝堂へと向かいます。
そこにルイスが飛び込んできて、「ジプシーの女が捕えられ、火あぶりの台に火がつけられる。」と告げます。
マンリーコはレオノーラに「私はアズチェーナの息子だ。」と打ち明けます。
そして伯爵たちへの怒りと、母への想いを歌います。(Di quella pira l'orrendo foco)
「Di quella pira l'orrendo foco」
ルイスや兵士たちも武装し、マンリーコもアズチェーナを助けに急いで走り出します。
第4幕:『トロヴァトーレ』のあらすじ
マンリーコが捕えられる
アリアフェリア城の近く
レオノーラのアリア
マンリーコは捕えられてしまいます。
そこに彼を救うために、レオノーラがルイスに連れられ現れます。
レオノーラはルイスを帰し、マンリーコへの想いを歌います。(D'amor sull'ali rosee )
舞台裏からは死者を憐れむ歌が聞こえ、マンリーコはレオノーラへの別れを叫びます。
「D'amor sull'ali rosee 」
伯爵とレオノーラ
伯爵が部下を連れて現れます。
しばらくすると伯爵は一人になります。
そこでレオノーラは伯爵の前に姿を現し、「私自身をあなたに捧げるので、マンリーコを助けてほしい。」と懇願します。
伯爵はマンリーコを助けることを約束し、去っていきます。
毒を飲んだレオノーラが息絶える
牢獄
牢獄の中で、火あぶりを恐れるアズチェーナをマンリーコが慰めています。
アズチェーナは夢うつつになりながら「私たちの山へ帰ろう」と歌い出し、やがて眠りにつきます。
マンリーコとレオノーラ、レオノーラの死
マンリーコを助けるために、レオノーラが現れます。
マンリーコは、「レオノーラが命の代償として身体を差し出した。」ことを知り、強く怒り、呪います。
しかしレオノーラはマンリーコへの愛を守るために毒を飲んでいました。
マンリーコは彼女を呪ったことを後悔します。
しかしレオノーラの毒は思ったより早く効きはじめ、マンリーコを助ける前に彼女は毒で死んでしまいます。
マンリーコが処刑され、アズチェーナの復讐が完結する
伯爵は自分を騙してまでマンリーコへの愛を貫いたことに怒ります。
そして、マンリーコを処刑台へ連れていきます。
マンリーコが処刑される中、アズチェーナが目を覚まします。
アズチェーナは「マンリーコは伯爵の弟だ」と告げ、「かたきをうった!」と叫びます。
伯爵が恐怖で立ちすくむ中、幕は閉じます。
ヴェルディ『トロヴァトーレ』の映像
輸入盤・日本語字幕なし
『トロヴァトーレ』のDVD・Blu-rayは多くの種類が発売されていますが、この録音を外すことはできません。
これ以上ないキャストが集結し、カラヤン指揮・ウィーン国立歌劇場管弦楽団のもとで素晴らしいオペラが堪能できます。
1978年ウィーン国立歌劇場のライブ映像のため、近年の映像と比べると画質は良くありませんが、それでもおすすめの1枚です。
役名等 | 演奏 |
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マンリーコ | プラシド・ドミンゴ |
レオノーラ | ライナ・カバイヴァンスカ |
ルーナ伯爵 | ピエロ・カプッチッリ |
アズチェーナ | フィオレンツァ・コッソット |
フェランド | ヨセ・ヴァン・ダム |
演奏 | ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団 |
指揮、演出 | ヘルベルト・フォン・カラヤン |
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