項目 | データ |
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作曲年 | 1822-1824年 |
初演 | 1824年5月7日 |
献呈 | プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世 |
演奏時間 | 70分程度 |
ベートーヴェンの交響曲第9番は、その名の通りベートーヴェンの作曲した9作目の交響曲です。
ベートーヴェンの最後の交響曲でもあります。
日本では「第九」の愛称で親しまれています。
年末になると、日本のいたるところでアマチュアもプロも関係なく演奏会が開かれています。
日本においてのベートーヴェンの最も有名な交響曲は「第九」ではないでしょうか。
実は「第九」の初演はアマチュアのオーケストラ・合唱で演奏されました。
今の日本のスタイルと似ていますね。
「第九」を演奏するにはオーケストラ・ソリスト・合唱と、かなり多くの人数を必要とします。
そのため、海外では日本ほど演奏機会がないのが現状です。
「第九」は世界中から高い評価を受けており、EUの統一性を象徴するものとして採択されています。
第2次世界大戦終戦後のバイロイト音楽祭でも、ベルリンの壁崩壊の記念コンサートでも、演奏されたのは「第九」でした。
ここでは交響曲第9番「第九」の解説と名盤の紹介をしたいと思います。
ベートーヴェン 「交響曲第9番(第九)」の演奏
[01:49]第1楽章:Allegro ma non troppo, un poco maestoso ニ短調 4分の2拍子[19:34]第2楽章:Molto vivace ニ短調 4分の3拍子
[35:27]第3楽章:Adagio molto e cantabile 変ロ長調 4分の4拍子で始まる
[52:12]第4楽章:歓喜の歌(声楽・合唱部分)
指揮:リッカルド・ムーティ(Riccardo Muti, 1941年 – )
演奏:シカゴ交響楽団(The Chicago Symphony Orchestra/CSO)
交響曲第9番の解説
「第九」の最も特徴的なものは、何といっても4楽章の合唱です。
シラーの詩が歌詞となっており、「歓喜の歌」と呼ばれています。
ベートーヴェンはシラーの詩の気に入った部分をピックアップし、第九の歌詞に採用しました。
交響曲に声楽が使用された曲は以前にもありましたが、効果的に声楽を使った初めての作品だと言えます。
声楽だけではなく、シンバルやトライアングルなどのこれまで交響曲では余り使われなかった打楽器も使用しています。
「第九」は、シューベルト、ブラームス、ブルックナー、マーラーをはじめとする後の大作曲家たちに大きな影響を与えました。
交響曲の常識を破りロマン派の扉を開いた超傑作が「第九」なのです。
当時の社会情勢も反映している!?
「第九」は、当時のウィーンの社会情勢を反映していると言われることもあります。
それはクレメンス・・フォン・メッテルニヒ(Klemens von Metternich/1773年-1859年)による政治です。
メッテルニヒはウィーン会議の議長を務め、1821年にオーストリア宰相に就任します。
彼は保守的な政治を展開し、自由を求める市民を抑圧しました。
このメッテルニヒによる体制は1848年まで続くことになります。
ウィーン市民が「自由を求める声」や「体勢への不満」も、この作品に影響を与えているのかもしれません。
合唱は、当時の人々には斬新すぎた
「第九」の初演は大成功に終わりました。
難聴で拍手の聞こえなかったベートーベンが、助手に促されてようやく反響に気付いたのは有名な話です。
この大成功した「第九」ですが、実は第4楽章は別でした。
その後は、4楽章を除いた1~3楽章で演奏会が開かれることもしばしばありました。
今や大傑作として知られている第九の4楽章も理解されるには時間がかかったというわけです。
それだけ当時の音楽と比べると革命的だったのでしょう。
第九は「暖めて暖めて」作曲した作品
ベートーヴェンが初めてシラーの詩に感激したのは1792年のことでした。
シラーと交際のあった若い詩人ルートヴィッヒ・フィシェニヒと親しくすることで、ベートーヴェンはシラーに興味を持ち始めたそうです。
これは「交響曲第1番」を書く7年も前のことでした。
ベートーヴェンは、この頃からシラーの詩に曲を付けたいと考えていたそうです。
その後、1822年に合唱の旋律が書かれ、1824年に初演を迎えています。
「歓喜の歌」は、ベートーヴェンがずっと作曲したかった作品だったのかもしれません。
ちなみにベートーヴェンの作品の中に「合唱幻想曲」という曲があります。
これはオーケストラとピアノ・ソリスト・合唱で演奏され1808年に作曲された作品です。
この合唱部分は「歓喜の歌」を彷彿させます。
演奏機会は少ないですが、機会があれば是非生で聴いてみてください。
古典的な音楽の中に、第九の香りがします。
4楽章以外も名曲
第九番と言えば合唱部分だけが取り上げられることが多いですが、1~3楽章も名曲です。
気付かないだけでテレビでも流れていたりしています。
第九はすべてが緻密に計算されて作曲されており、1~3楽章は4楽章へと続く伏線でもあります。
是非全曲を通して楽しんでみてください。
"初演"より"私たちの演奏"の方が上手!?
「第九」の初演はドタバタの中で進まれました。
さらに当時ウィーンでは戦争の影響で、優秀な演奏家が不足していました。
リハーサルも数回だったと言われ、そこにはアマチュアのメンバーが多く参加していたそうです。
そのためオーケストラが崩壊するのを防ぐために、ピアニストが本番でも伴奏を弾いたそうです。
さらにはソリストも10代を含む若手の声楽家たちでした。
そのため"初演は大成功だった"が定説ですが、「ベートーヴェンのファンにのみ高評価」だったのではとも言われています。
もしかすると、「記念すべき初演の演奏より、私たちの第九の演奏の方がずっと音楽的」であることも考えられます。
交響曲第9番の名盤
交響曲第9番には数多くの録音が残されています。
演奏の聴き比べをして、お気に入りの演奏も見つけたいですね。
交響曲第9番の1枚目のCDを買うのであれば、間違いなくオススメできるCDです。
カラヤン指揮・ベルリン・フィルハーモニーのベートーヴェン交響曲全集が一度に手に入ります。
輸入盤で格安で購入できるだけでなく、音質も素晴らしいです。
カラヤンとベルリンフィルが脂に乗っている時期の作品です。
カラヤンの美学とベルリンフィルの名演が絡み合って、最高のハーモニーを奏でています。
カラヤンらしさが一番感じとれる時期かもしれません。
クラシック初心者の方は、このCDを買って損はないと思います。
ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan/1908年4月5日-1989年7月16日)
オーストリアの指揮者
1955年から1989年までベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者・芸術監督を務める。
ウィーン国立歌劇場の総監督やザルツブルク音楽祭の芸術監督も務めるなど、歴史上最も偉大な指揮者の一人である。
日本には11度も来日しており、日本人には小澤征爾が師事したことでも知られている。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)
世界を代表するオーケストラの一つで、日本において絶大な人気を誇る。
重厚なドイツ的サウンドを奏でながらも、バラエティに富んだプログラムを演奏し常に世界の最先端をリードしている。
ゼンパーオーパー再建記念の「第九」
ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン
第二次世界大戦でドレスデンは爆撃され、ゼンパーオーパーも破壊されてしまいました。
そのゼンパーオーパーは40年後の1985年に再建されます。
その記念コンサートの一つとして「第九」も演奏されました。
このCDはそのコンサートのライブ録音です。
歴史的記念公演であるというだけでなく、演奏も引き締まった名演です。
緩急の効いたメリハリのある音楽で、シュターツカペレ・ドレスデンの美しい音色を堪能することが出来ます。
キャスト等
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
シュターツカペレ・ドレスデン
ドレスデン国立歌劇場合唱団
イーディス・ウィーンズ(ソプラノ)
ウテ・ヴァルター(アルト)
ライナー・ゴルトベルク(テノール)
カール=ハインツ・シュトリチェク(バス・バリトン)
録音:1985年3月30、31日、ゼンパーオーパー(ドレスデン)
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