目次
題名 | マクベス(Macbeth) |
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初演 | 1847年3月14 ペルゴラ座(フィレンツェ) |
改訂版 | 1865年4月21日 リリック座(パリ) |
原作 | ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』 |
台本 | フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アンドレア・マッフェイ |
演奏時間 | 2時間30分 |
『マクベス(Macbeth)』は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)の初期の傑作オペラです。
ヴェルディの自信作であったマクベスですが、初演の成功後すぐに聴衆の熱は冷めてしまいます。
また、パリでの改訂版初演も失敗に終わってしまいます。
その後、『マクベス』の上演機会は長い間希少なものとなってしまいます。
しかし、1920年代にドイツで起こったヴェルディブームで再び脚光を浴び現在に至りました。
ここではヴェルディのオペラ『マクベス』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
人物名 | 詳細 |
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マクベス(バリトン) | ダンカン王(スコットランドの王)に仕える将軍 |
バンコー(バス) | ダンカン王に仕える将軍 |
マクベス夫人(ソプラノ) | マクベスの妻 |
侍女(メゾソプラノ) | マクベス夫人の侍女 |
マクダフ(テノール) | スコットランドの貴族 |
マルコム(テノール) | ダンカン王の遺児 |
医師(バス)、ダンカン王(黙役)
『マクベス』の簡単なあらすじ
時間のない方のための「簡単なあらすじ」
第1幕
魔女が「マクベスが王となる」「バンクォーが王たちの父となる」と予言します。
マクベスと夫人は、その野望のために王を暗殺し、王位を奪います。
第2幕
マクベスと夫人は、王位を守るためにバンクォーも殺害します。
第3幕
魔女たちが
「マクダフには気をつけろ」
「女から生まれたものは、お前を傷つけることはない」
「バーナムの森がお前に向かってくるまでは、恐れることはない」
と新たな予言をします。
その後、マクダフ(マクベスに妻子を殺された)が復讐のために立ち上がり、マクベスに進軍します。
マクベスはマクダフに討たれ、予言が的中します。
新たな王が誕生し、幕が下ります。
第1幕:『マクベス』のあらすじ
魔女が「マクベスが王となる」ことを予言する
第1場:森
雷鳴と稲妻の中、魔女たちが呪文を唱えています。
そこにマクベスとバンクォーが通りかかります。
バンクォー・・・同じくダンカン王に仕える将軍
魔女たちは、彼らに
「マクベスは、グラミスとコーダーの領主となり、スコットランドの王となる。」
「バンクォーは、王たちの父となる。」
と予言し、消えていきます。
そこに伝令から「マクベスがコーダーの領主となった」との知らせが入ります。
二人は予言の的中に驚き、マクベスは王になる野心を抱きます。
マクベス夫人が「王の殺害」を夫に命じる
第2場:マクベスの城の広間
マクベス夫人が、マクベスからの「予言について書かれた手紙」を読んでいます。
マクベス夫人は
「予言者はあなたに王を約束したわ。王になるのよ!」
と夫を王に君臨させる野望を歌い上げます。(Vieni t'affretta!)
「Vieni t'affretta!」
マクベス夫人は「ダンカン王が今夜ここに来る。」ことを召使から聞きます。
そこにマクベスが帰ってきます。
夫人はマクベスに「明日、その太陽(王の命のこと)を昇らせてはいけません。」と暗に王の殺害をほのめかします。
やがて国王一行が到着します。
マクベスが王を殺害し、恐怖におののく
マクベスは短剣を持ち、幻影に恐れながら、国王のいる部屋へ入っていきます。
やがて夫人の前に、短剣を持ち震えたマクベスが血だらけで現れます。
マクベスは狂ったように怯えて、王の殺害の様子を語ります。
夫人は短剣を取り上げ、夫を引きずり逃げていきます。
続いてマクダフ(貴族)が国王を起こすために、王の部屋に入っていきます。
マクダフが「暗殺だ!」と叫ぶ中、マクベスと夫人は素知らぬ顔で現れます。
皆が「天よ、殺人犯にあなたの炎を落としてください!」と叫ぶ中で、第1幕が終わります。
第2幕:『マクベス』のあらすじ
マクベスと夫人が「バンクォーの殺害」を計画する
城の一室
マクベスは王になったものの「バンクォーが王の父となる」という予言が気になっています。
マクベスと夫人は「バンクォーの殺害」を計画します。
マクベスが去ると、
夫人は「新たな犯罪が必要なのよ。彼らに永遠のレクイエムを。」と歌います。(La luce langue)
「La luce langue」
バンクォーは殺されるが、彼の息子が生き残る
マクベスの城の近くの公園
バンクォーが息子を連れて現れます。
マクベスの刺客たちは彼らを殺害しようとします。
バンクォーは息子を逃がしますが、自らは殺害されてしまいます。
マクベスがバンクォーの亡霊に恐れ、錯乱状態となる
マクベスの城の大広間
マクベスの国王就任の祝賀会が開かれています。
そこに「バンクォーは殺したが、息子は取り逃がした」という知らせが入ります。
マクベスが玉座に座ろうとすると、そこに「バンクォーの亡霊」が見えます。
マクベスは恐怖に狂い、錯乱状態となり、「墓は死んだ人間を生き返らせられるのか」と亡霊に語りかけます。
皆がマクベスの罪を察知し「この国は盗賊たちの洞窟となってしまった!」と歌う中で、第2幕が終わります。
第3幕:『マクベス』のあらすじ
幻影がマクベスに「3つの予言」をする
魔女たちの洞窟
マクベスが魔女たちに「私の運命を知りたい。」と、助けを求めてやってきます。
魔女たちが霊を召喚すると、幻影が現れ
「マクダフには気をつけろ」
「女から生まれたものは、お前を傷つけることはない」
「バーナムの森がお前に向かってくるまでは、恐れることはない」
と助言します。
マクベスと夫人が「マクダフ一家とバンクォーの息子の殺害」を決意する
さらにマクベスは「バンクォーの息子が、私の王座に上るのか!?」と問いかけます。
しかし魔女たちはそれに答えず、代わりに8人の王の亡霊を見せます。
亡霊の最後に、バンクオーが手に鏡を持って現れます。
マクベスは再びバンクォーの亡霊に怯え、恐怖のあまり気を失います。
魔女たちが去ると、そこにマクベス夫人が現れます。
夫人が事の一部始終を聞くと、マクベスと夫人は今度は「マクダフ一家とバンクォーの息子の殺害」を決意します。
第4幕:『マクベス』のあらすじ
マクダフの妻子は殺されてしまった
スコットランドとイングランドの国境の荒地(遠くにバーナムの森)
マクベスに国を追い出された亡命者たちが、祖国の哀しい現実を歌っています。(Patria oppressa)
「Patria oppressa」
そこには妻子を殺されたマクダフの姿もあります。
マクダフは「お前たち皆(妻子のこと)は、あの独裁者に殺された。この父の手で守れなかった。」とその無念さを歌い上げます。
(Ah, la paterna mano)
「Ah, la paterna mano」
マクダフが復讐を決意する
そこにマルコム(ダンカン王の遺児)が現れます。
マルコムはマクダフに「バーナムの森の枝を切って手に持ち、それで姿を隠して進軍しよう」と復讐を提案します。
そして、マクダフと皆は復讐を誓います。
夫人は夢遊病となり、血痕を洗う仕草を繰り返している
マクベスの城
マクベス夫人は恐怖のあまり夢遊病となり、手を洗う仕草をしながら「血痕がまだここにあるわ…消えて!」とさまよっています。(Una macchia è qui tuttora)
「Una macchia è qui tuttora」
一方、マクベスは「マルコム(ダンカン王の遺児)の進軍」を知ります。
バーナムの森(マルコムの軍)が進軍してくる
マクベスは
「裏切者め!」
「私は恐れぬ!」
「予言者は"女から生まれたものはお前を傷つけない"と語ったのだ。」
と歌います。(Pietà, rispetto, amore)
そこに夫人の死の知らせが突然入り、さらに「バーナムの森が動いている」との知らせも入ります。
マクベスは予言を思い出しますが、「死か勝利だ!」と叫び出陣します。
マクベスが撃たれ、マルコムが王となる。
戦場
それぞれの軍が衝突し、マクダフとマクベスが剣を交えます。
マクベスが「女から生まれた者は私を殺すことはできない!」と叫ぶと
マクダフは「私は生まれていない、子宮から引き裂かれたのだ!」と返し、剣をかざします。
マクベスは討たれます。
マルコムが新しい王として称えられる中で、オペラが終わります。
ヴェルディ『マクベス』の映像
タイトルロールのサイモン・キーンリーサイドが母国イギリスでの初マクベスで、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。
ウクライナの歌手リュドミラ・モナスティルスカはこのマクベス夫人で賛辞を浴び、翌年にはメトロポリタン歌劇場へデビューし、現在の活躍へと至っています。
2011年6月:ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)
マクベス:サイモン・キーンリーサイド
バンクォー:ライモンド・アチェト
マクベス夫人:リュドミラ・モナスティルスカ
マクダフ:ディミトリ・ピッタス
マルコム:スティーヴン・エベル
など
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:フィリダ・ロイド
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