ボイトレ業界の言葉の定義は曖昧
ボイストレーニングの際には、様々な言葉を用いて指導します。
しかし、それぞれの言葉にはっきりとした定義がないのがボイストレーニング業界の現状です。
様々な解釈が混在してしまっているため、私も選ぶ言葉に非常に迷います。
同じ「ファルセット」でもお互いの中の認識が違う場合もあります。
どちらが正しいかを議論することも必要かもしれませんが、それより大切なことは「声や音色のイメージ」で共通の認識を持つことです。
ですので、「言葉を使いつつ」「なるべく実際の声を実演して」その言葉が指す意味を伝えるようにしています。
「ファルセット」とは何?
例えばファルセットとはどのような声でしょう。
1.息漏れの激しい裏声
2.1の裏声の息漏れをなくしたもの
3.2を地声の音色に近づけたもの
4.ヘビメタのような高音域で使われるいわゆる「ヘッドボイス」
5.カウンターテナーのような裏声
様々な出し方がありますね。
いずれも、いずれかの場所で「ファルセット」と説明されています。
イタリアでベルカントオペラ全盛の時代で、テノール歌手が自分の高音の声をファルセットと記している記録もあります。
このファルセットが、息漏れのあるフクロウの鳴き声のようなものではないことは明らかです。
声に関する言葉の定義は難しいものがあります。
「ミックスボイス」とは何?
ではミックスボイスとはどのような声でしょう。
当ボイストレーニングスクールでは、地声の要素を含んだものをミックスボイスとしています。
しかし、裏声をそのまま強化したものをミックスボイスとしているところもあります。
実際に裏声の息漏れをなくして強く発声できるようになると、とても地声に似た音色を出すことができるようになります。
あくまで私の場合ですが、私はこれをミックスボイスとは呼んでいません。
このように、やはりミックスボイス・ミドルボイス・ヘッドボイスなどの用語は誤解が生じやすいため、ボイストレーニングではあまり使っていません。
ただしパッサッジョ(喚声点)など誤解の生じにくい言葉は使います。
明確な定義が様々な流派の中で統一されることが一番ですが、なかなか現実的ではありません。
言葉に多様な意味があるのは不自由ですが、「言葉にあまりナーバスになり過ぎず」「現場での声の実践の中で」本物の歌声を見つけていきましょう。
「ミックスボイスを出したい」「ヘッドボイスを出したい」というよりは、具体的な歌の音色をイメージして「その声を出したい」と考えたほうが道を定めやすい場合もあります。