目次
「音程が取れるようになる」ことを目標に、ボイストレーニングを受講している人も多いのではないでしょうか。
音程が取れるかどうかは、歌唱テクニックで最も大切な要素のひとつです。
実際に音程がまったく合っていなかったら、どんなに表現力が豊かでも、人の心を動かすことは難しいでしょう。
正しい音程で歌うことは、簡単なことではありません。
しかし音程が合うと、歌の印象は格段にアップします。
この記事では、音程の取り方のコツを紹介していきます。
自分に合った方法があれば、ぜひ取り入れてみてください。
正しくトレーニングすれば、音程は取れるようになります。
音程の取り方をマスターして、歌をより楽しんでいきましょう。
音程が合っているか、声を録音しよう
まず第1段階として、自分の音程が合っているかどうかを確認しましょう。
よほど音程に自信がある人以外は、声の録音をオススメします。
声は、客観的に聴けない数少ない楽器です。
ピアノやギターなどと違い、声は身体の中で鳴り響きます。
自分では「音程は合っている」と思っていても、実際にはズレていることがよくあります。
録音した声を分析して、ズレている音程を確認しましょう。
歌い慣れていない曲は、そもそも音程を覚えていないかもしれません。
録音する曲は、普段から歌い慣れている曲にするといいでしょう。
「自分の声を聴くのが嫌だ」という人もいるかもしれません。
しかし録音の回数を重ねると、次第に違和感はなくなってきます。
なぜ音程が取れない!?|4つの原因
音程が取れないといっても、原因はひとつではありません。
大きく分けて、以下の4つが考えられます。
- 音程がわからない
- 部分的に音程がズレてしまう
- 正しい音程がわかるのに出せない
- 実は音程が合っている
音程がわからない=聴く能力をアップしよう
自分の音程が合っているかわからない場合は、聴く能力を鍛える必要があります。
聴く能力を鍛えるには、人間の声ではなく、楽器の音を参考に練習しましょう。
ピアノが弾ける人は、ピアノで丁寧に音程を確認してください。
楽器が弾けない場合は、たとえばアーティストのオリジナルの楽曲を聴いた後で、同じ曲のカラオケのガイドメロディをじっくりと聴くことをオススメします。
自分の認識している音程とガイドメロディに違和感をおぼえたら、違和感がなくなるまで聴き続けましょう。
何度も繰り返しガイドメロディを聴くだけでも、音感の改善は期待できます。
音程がわからないことを克服するのに、一番効率がいい方法は、ボイストレーニングに通うことです。
客観的に歌を聴いてもらえば、どこが正しくてどこが間違っているのかがすぐにわかります。
独学でトレーニングするよりも、短時間で克服できる可能性が高いでしょう。
部分的に音程がズレる=丁寧な練習で課題クリア
部分的に音程がズレてしまう人の多くは、音程の感覚はありますが、音程に敏感でない傾向があります。
ズレている音程を細かく確認し、正しい音程で歌えるように練習しましょう。
部分的に音程がズレる人は、伸ばしている音やスローテンポの曲だと、音程を取りやすく感じるかもしれません。
出だしの音や早く音程が変化する場所を、入念に練習するといいでしょう。
正しい音程が出せない=発声テクニック
正しい音程がわかるのに出せない場合は、発声テクニックを磨くことが必要です。
「わかっているのに出せない」多くの原因は、発声のバランスが崩れていることです。
ほとんどの人は、本来の音程より低くなってしまい、高くなってしまう人は珍しいでしょう。
音程がわかる人は、力みなく歌えるようになれば、自然に正しい音程が取れるようになってきます。
もし力みなく歌えても音程が合わない場合は、歌う量が足りないのかもしれません。
音程の違いがわかるのなら、同じ音程を何度も出すと、身体は音程のとり方を覚えてきます。
歌う回数を増やして、まずは歌うことに慣れましょう。
実は音程が合っている=表現力を磨く
歌が苦手だと思っていても、音程が合っているケースもあります。
歌い方に独特な癖があったり、表現が苦手だったりすることで、音程が合っていないと間違って認識しているのです。
そのような場合は、表現力のアップを意識していきましょう。
音程の取り方をマスターする6つのコツ
音程を取れるようになるコツはいくつもあります。
しかしトレーニング方法が合う合わないは、人それぞれです。
ここでは音程の取り方をマスターするために、以下のコツを紹介します。
- 裏声で音程を取る
- ハミングで音程を取る
- 口を過度に動かさない・開けない
- 無理のない音域で歌う
- 音の高低で、歌う場所を変えない
- ペットボトルとストローを使って歌う
自分自身に合っているものがあれば、ぜひ練習に取り入れてみてください。
裏声で音程を取る
音程は、地声よりも裏声の方が音程を取りやすいです。
すべて裏声で歌って、音程を取る練習をしてみましょう。
同じ音程であれば、地声も裏声も音程の感覚は変わりません。
男性は歌声の筋肉を使い慣れていない人が多いため、とくに男性に効果が出やすいトレーニングです。
ハミングで音程を取る
ハミングが上手にできるようになると、音程が取りやすくなります。
ハミングは、歌詞で歌うときより音程のズレを感じやすいのも特徴です。
一つひとつの音程をハミングで丁寧に確認していけば、音程を取るコツがつかめるかもしれません。
ハミングは、その他に
- 声が響くようになる
- 音域が広がる
などの効果も期待できます。
ただし間違ったやり方でハミングをすると、声帯に負担がかかってしまうかもしれません。
疲れや違和感、喉の痛みを感じたら、ハミングの練習はストップしましょう。
ハミングの発声は、鼻に響きを感じます。
しかし鼻だけに響きを感じると、ハミングがうまくいかないこともあります。
そのときは、鼻だけではなく、鼻より上の頭蓋骨全体で響きを感じてみてください。
口を過度に動かさない・開けない
音程が変わるごとに口の大きさを変えると、音程をいちから取り直す必要があり、音程が安定しにくくなります。
口を開けすぎると力みが発生し、これも音程が不安定になる原因になるでしょう。
発声のバランスが崩れると、音程が下がりやすくなります。
過度に口を動かしたり開けたりしないことが大切です。
無理のない音域で歌う
音程が低すぎたり高すぎたりすると、正しい音程は取りにくくなります。
出しにくい音程を取りにくいのは、歌が得意な人も苦手な人も同じです。
選曲をするときは、自分に合った音域のものを選びましょう。
音域が合わない場合は、キーを変えて歌うことをオススメします。
出しにくい音程は、音程の取り方とは別に、発声トレーニングで練習していきましょう。
音の高低で、歌う場所を変えない
音程の高さは、振動数によって決まります。
振動数の多い音程は高く、振動数が少ない音程は低いというわけです。
「音程の高低=振動数の多い少ない」ということです。
高い・低いで音程の取り方がうまくいかない人の多くは、
- 高音は高い場所
- 低音は低い場所
を狙って歌おうとしています。
声を狙う場所は音程によって多少変わりますが、基本的には同じ場所を狙って歌いましょう。
同じ場所を狙った方が、結果的に音程のズレが少なくなり、安定して歌えるようになります。
ペットボトルとストローを使って歌う
ペットボトルとストローを使った練習方法は、多くのメディアで紹介されている有名なトレーニング方法です。
水を入れたペットボトルにストローをさして、ストローをくわえながら歌うだけの練習方法です。
ストローは、太いものをオススメします。
音がほとんど出ない練習方法なので、防音環境がなくても手軽に練習できます。
やりすぎるとバランスが崩れるので、ほどほどにしましょう。
ブクブクしながら数分声を出すだけで、声が軽くなる効果が期待できます。
声帯が反応しやすくなり、音程が取りやすくなるでしょう。
パターン別に音程の取り方を解説
音程がズレてしまう場所は、大きく以下の3つに分けられます。
- 歌い出しの音程がわからない
- コードの切り替わりの音程がわからない
- フレーズの途中の音程がわからない
これらについて解説していきます。
発声テクニックに問題がある場合は、これらの3つには該当しません。
リラックスして歌えるテクニックを身につけましょう。
すべてに共通することは、苦手な部分を繰り返し「聴く・歌う」ことです。
歌い出しの音程がわからないときの対処法
歌い出しの音程がズレてしまう悩みは、多くの人に当てはまります。
なぜなら声を出しながら次の音程を探すのに比べて、最初に出す声は音程を取るのが難しいからです。
音感がある程度ある人であれば、何度も音楽を聴くだけで改善することがあります。
歌い出しの10秒ほど前から曲を再生し、出だしの音程をイメージし続けてください。
そして、イメージと歌い出しの音程が同じだったか確認しましょう。
イメージと実際の音程が一致するまで、この作業を繰り返します。
なんとなく聴くだけでは、効果はあまりありません。
一つひとつの音程を意識して、曲を聴きましょう。
イメージが一致したら、次は同じ範囲を再生し、実際に声を出してみます。
何度か声を出してみると、音程を取れる確率が上がってくるはずです。
この練習は、音感を鍛えるトレーニングにもなります。
大人になってからでも音感はある程度鍛えられますので、ぜひ「音程を繰り返しイメージする練習」を試してみてください。
コードの切り替わりの音程がわからないときの対処法
音程を取るのが得意であっても、「難しいコードの音程」や「コードの切り替わりの音程」を取れなくなることがあります。
曲を繰り返し聴くことでも対処できますが、オススメの方法は楽器でコードを弾くことです。
ギターよりも鍵盤楽器の方がそれぞれの音程が聴きやすいので、ピアノやオルガンなどで弾いてみてください。
これもコード進行に違和感がなくなるまで、音程が取れない部分を何度も繰り返します。
コード進行に違和感が消えたら、次にメロディを一緒に弾いたり、実際に歌ってみたりしてください。
やみくもに歌うよりも、先にコード進行やメロディを楽器で弾いて覚えましょう。
その方が喉も疲れずに済みますし、音感も鍛えられます。
一度に長時間練習するより、短時間でもいいので何日もかけて練習する方が効果的です。
フレーズの途中の音程がわからないときの対処法
フレーズの途中の音程がズレてしまうときは、そこに音程の意識があるかどうかを確認してください。
経過音をなんとなく歌ってしまうと、音程のズレにつながります。
対処法は「ゆっくりしたテンポでメロディを弾く・歌う」ことです。
音程にしっかりと意識がもてるように、テンポを遅くすることがコツです。
これも違和感がなくなるまで、繰り返しメロディを弾きます。
そして、違和感がなくなったら、音程が合うまで繰り返し歌います。
気を抜かず、すべての音程に集中しましょう。
これらの2つの作業が終わったら、最後に実際のテンポで歌ってみてください。
遠回りに思える作業ですが、音程が合う確率はグンと高まります。
音程を安定させるには?
音程を安定させるには、音感トレーニングの他に、発声テクニックも磨く必要があります。
- 身体の支え
- 声の響かせ方
- 呼吸
など、さまざまな角度で試してみるといいでしょう。
わずかな音程のズレの多くは、音感のズレではなく、発声のバランスが崩れて起こるものです。
ここでは、感覚を含めて、音程を安定させる方法について解説します。
歌う感覚は人によって大きく異なるため、一つのことを信じすぎないようにしましょう。
正しいことでも、自分には合わないこともあります。
「身体の支え」で音程を安定させる
支えが意識できるようになると、音程が安定しやすくなります。
- 横隔膜
- 丹田
が音を支えるために必要だと一般的にいわれますが、これだけではありません。
うなじで支えを感じる人もいれば、歌うときに腰や背中、胸、足を意識する人もいます。
さまざまな身体の部分を意識して、感覚を試してみましょう。
ただし、歌が上手い人のほとんどが「お腹周辺」に意識があることは事実です。
不思議なことに、お腹以外の場所を意識することで、お腹に正しく力が入ることもあります。
「自分に合った発声イメージ」で音程を安定させる
音程の上下に関係なく、同じようなイメージで歌えてくると、音程は安定してくるでしょう。
イメージは下記の通りさまざまで、挙げれば切りがありません。
- おでこに声を響かせる
- 頭の上をめがけて声を出す
- 目の前にある針の穴に糸を通すように歌う
- 声を集める
- 声を頭の後ろから前方に飛ばす
- 口蓋(口の上部分)を沿って、声を前に出す
- 硬口蓋と軟口蓋の間辺りに声を感じる
- 鼻腔共鳴を意識する
- 鼻歌に近い場所で歌う
どのイメージが合うかは、人によってまったく異なります。
もし自分にあったイメージが見つかれば、声が突然安定することもあるでしょう。
「呼吸」で音程を安定させる
胸式呼吸は、声帯付近や余計な部分が力みやすくなります。
胸式呼吸が力みの原因の場合は、腹式呼吸で歌えるようになると、音程が安定するかもしれません。
また腹式呼吸は、胸式呼吸に比べて、声に力を入れやすいのも特徴です。
ロングトーンや力強い声を出すときは、腹式呼吸の方が安定しやすいでしょう。
腹式呼吸はやり方を覚えると、自然にできるようになります。
まずは歌わずに、呼吸のみで練習することがオススメです。
まとめ|音程を正しく取れるようになろう
この記事では、音程の取り方のコツを紹介してきました。
音程に自信がもてると、曲の印象が格段にアップし、歌うことも楽しくなってきます。
これらの音程トレーニングを参考にして、実際の曲や練習で活用してみてください。